好きになってもいいですか？(緑) (ページ43)

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「…クリスマスだから彼女といるのかなって」

思わず言い返した。もちろんすぐに後悔する。

責められる立場にはあっても、私は彼女の事を言えるような立場じゃない。

「…ごめん」

「…そんなん言うのズルいで」

慌てて謝る私に、忠義くんが呟いた。

こないだからズルいのは忠義くんの方だ。

今も、否定しないって事はそういう事なんだろう。

だけど勝手に気持ちを膨らませているのは私だし。

モヤモヤと胸の中に広がる嫌な感情もそれこそ私の勝手で、忠義くんには関係ない。

「昨日はみかちゃんとゆみちゃんがケーキとワイン用意してくれてね。それ食べながら3人で盛り上がっちゃって、遅くなっちゃったから。寝てると悪いし」

なるべく明るい声で昨日の事を説明すると、俺こそごめん、と電話の向こうから溜息混じりの声がした。

そのごめんは何に対してなんだろう。

でもそれすらも聞いたらいけない気がして、言葉を飲み込んだ。

「今日は2人に、お礼のクリスマスプレゼント買って行こうと思って」

「…ええやん。何買うん？」

「んー、お気に入りのボディスクラブにしようかな。つっるつるのぴっかぴかになるから」

「つっるつるのぴっかぴかて…語彙力小学生並みやで」

誤魔化すように話し続ける私に忠義くんが電話の向こうで小さく笑った。

仕事中だと言う忠義くんは少しするとスタッフさんに呼ばれたらしい。

「ごめん、切るな」

「私こそ、仕事中にごめんね」

「掛けたん俺やん」

「そうだけど」

切る、と言いつつ一向に電話が切れる気配がなくて。

さすがに仕事中だし、いい加減に切ろうとすると、なぁと引き止められた。

「どうしたの？」

「…年明け、休みあるから…会いに行ってもええ？」

忠義くんは本当にズルい。

ちょっとだけ掠れた声で、不安そうに聞かれてしまったら私が嫌だと言えない事、きっとわかってる。

「…お店だよ？」

「閉店頃に行くわ」

ご飯を食べにお店に来るわけじゃない。

閉店頃って、それはきっと純粋に私に会いに来るって事だ。

それは一体どういう意味なのかなんてわからない。

もしかしたら彼女とケンカ中で、ちょっとした気まぐれなのかもしれない。

だけど、困った事にどんな理由であれ、会える事が嬉しいと思ってしまう自分がいる。

そんな自分にちょっと呆れながらも、小さくうんと返した。