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社交辞令だろうと思っていたし、きっともう来ないと思っていたけど、忠義くんは忘れた頃にお連れ様を連れて来てくれた。
最初の時のように話したり大笑いされる事もなかったけど、美味しかったと笑顔で帰って行った。
そして今日も、驚くほど綺麗な顔の男の子を連れて個室に入っていく。
案内したゆみちゃんがその子が忠義くんの後輩だと言う事を教えてくれた。
みかちゃんといい、ゆみちゃんといいよく知ってるなって感心していたら、Aさんが疎いだけですと言われてしまったけど。
それなりに好きな芸能人だっているし、疎くて困った事もないからたいして気にならない。
少なくとも村上さんが関ジャニ∞だって言うのは知っているし、忠義くんが同じグループだって事は覚えた。
それだけで充分だ。
閉店頃、個室から出てきた忠義くんはご馳走様でした、美味しかったと笑顔を見せて。
後輩さんと一緒に呼んであったタクシーに乗り込んだ。
「…Aさん、忘れ物です」
個室を片付けて戻ってきたみかちゃんの手にはサングラス。
多分来た時に忠義くんが掛けていたものだ。
サングラスくらいなら次に来た時にでも渡せば良いと思ったけど、あと…とみかちゃんが差し出しのは、何処からどう見ても運転免許証。
大倉忠義、としっかり書かれている剥き出しのそれ。
「…あら大変」
「なんでこんな物忘れるんですかね」
「…酔ってた？」
「そんな風には見えませんでしたけど」
確かにいつものように、美味しかったって笑って帰って行った。
生憎忠義くんの連絡先は知らないし、何よりこんな大事な物をなくしたって気付いたらすぐに電話が掛かってくると思ってた。
だからみかちゃんからサングラスと免許証を受け取って。
店の片付けを終えてから、少し待ってみる事にした。
だけど…。
日付が変わっても一向に電話が鳴る気配がない。
「…どうしよう」
あのまま後輩さんと一緒に2件目に行ってまだ呑んでるんだろうか。
それとも帰って寝ちゃった？
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作者名：咲菜 | 作成日時：2022年4月3日 21時
