好きになってもいいですか？(緑) (ページ32)

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いらっしゃいませ、みかちゃんとゆみちゃんの声がした。

顔を上げるといつもと変わらない様子でカウンターに座った忠義くん。

あの日以来忠義くんに会うのは初めてで、いらっしゃいませと笑顔を浮かべてみるものの、ちゃんと笑えてるか心配で仕方ない。

「Aちゃんお腹空いたぁ」

だけど私の心配を他所に、カウンター越し忠義くんが子供みたいな声を上げるから、思わず笑ってしまった。

「何食べる？」

「カレー」

「カレーなんてメニューにないの知ってるよね？」

「…言うてみたら作ってくれるかと思って」

「じゃあまた今度言ってくれれば作っとくから」

「え？ほんま？」

「ほんま」

真似せんといてーとか言いながらニコニコ笑う忠義くんは、結局ビールとサラダとパスタを注文した。

時々視線を感じて顔を上げると忠義くんと目が合う。

目が合う度に可愛い顔でニコッと笑う。

……ダメだ。集中出来ない。

いつも通りにと思えば思うほど忠義くんが気になってしまう。

しかも無駄に可愛いし。

もうあれは忠義くんじゃなくて別の生き物だと思う事にしよう。

──あれは忠義くんじゃない、あれは忠義くんじゃない。

小さく頭を振って呪文のようにそれを繰り返して、最後にペチンと両頬を叩いた。

その瞬間、ぶっと吹き出す声がする。

視線を向けると、口を押さえて肩を揺らす忠義くんと目が合った。

大丈夫ですか？とそれに気付いたゆみちゃんが慌てておしぼりを取りに向かう。

きっと今のを見られてたんだろうけど、原因は忠義くんなのに。

恨みがましく見てると、忠義くんはとうとう堪えきれずに笑い声を上げた。

…本当に相変わらずちょっと失礼なんだから。

でもそのおかげで私もいつも通りつられるように笑っていた。