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少しだけその綺麗な寝顔を眺めた後、今度こそベッドから起き上がる。
熱いシャワーを浴びて、気持ちを切り替えよう。
そしたらお昼を作って、いつもみたいに他愛ない話をして、いつもみたいに戻ろう。
お客さんみたいな、友達みたいなそんな私たちに戻ればいい。
しばらくして、気怠そうに起きて来た忠義くんは、なんで勝手にいなくなるん？って口を尖らせながら、シャワーを浴びに行った。
「つかまえたっ」
キッチンに立っていると、髪を濡らしたまま忠義くんが後ろから抱きついてきた。
「わ、あぶなっ」
「何作ってんのー？」
忠義くんは私の言葉を無視して、肩に顎を乗せて後ろから覗き込んでくる。
「ちょっと早いけど、お昼にしよ？仕事でしょ？オムライスにしようかな。食べる？」
「…食べる」
「じゃあ、危ないので離れてね？」
「えー、嫌やぁ」
「えー、私の大事な手に怪我でもしたらお店開けれなくなるー」
「…それはアカンわ」
私からしぶしぶ離れて、ソファに移動する。
ソファからじっとこっちを見てくるからちょっとやりにくいけど。
「やっぱりキッチンはこだわってるん？」
「とくには。ただキッチンが広いからこの部屋にしたけど。その分部屋が狭いよね」
「ここもいつきさんに紹介してもらったん？」
「そうだねぇ」
「ふーん」
「ふーん？」
「ふーん」
「…何？」
「別にぃ。もうまだぁ？お腹減ったー！」
忠義くんは大きな子供みたいに、ソファの上でバタバタと足を動かし始めた。
おじさんなのに、今日も可愛い。
その仕草にまた今日も癒しをもらって、勝手に顔が緩む。
甘い時間は本当にこれで終わりにしよう、そう言い聞かせる。
出来立てのオムライスを運ぶと忠義くんが嬉しそうにいつもの笑顔を浮かべた。
明日からはまた、お店でその笑顔を見れれば充分だ。
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作者名：咲菜 | 作成日時：2022年4月3日 21時
