25.(side T.O) ページ25
Aちゃんが作ってくれたおつまみ食べながら、ちっさい画面でさっきの続きを見る。
無理とか言いながら、Aちゃんはマルになんか見向きもせんと、俺と信ちゃんを見てはキャッキャッ言うて、カッコいいねぇとか呟いて。
時々笑ったりして。
俺がドラム叩く姿が映ると、俺の服くいくい引っ張って、何度も目が合うねん。
どないしよ…なんか隣に可愛い生き物がおるわ。
俺はただ黙って、画面を眺めるその可愛い生き物を眺めてた。
「忠義くんカッコいいね」
「…気づくの遅いで」
嬉しそうに真っ直ぐに言われてしまうと、さすがにちょっと照れてしまう。
DVDを見終わって、ニコニコのAちゃん。
「あー、カッコ良かった」
「照れるやん」
「マルちゃん」
「嘘つけ、俺ばっか見てたやん」
「あら、バレてる」
「バレバレや」
ニコニコと笑うAちゃんは素直に可愛いと思う。
ご機嫌な様子でワイン開けちゃおっかなぁ、飲む？って俺を見上げるその顔もツボやったりする。
「そういえば倦怠期乗り越えた？」
ワインを準備するAちゃんが、ふと思いついたように聞いてくる。
そういえばちょっと前にそんな話した。
からっからだからって自分で言うAちゃんが面白かったの思い出して、またちょっと顔が緩んでしまう。
「…どうやろ」
「えー、こんなとこいていいの？」
「こんなとこ言うな。自分の店やろ」
「…そういう意味じゃないんだけど」
「ここには癒されに来てるからええの」
「癒し…？」
「…彼女が癒しとか言うんやめてや」
「わ、バレた」
「Aちゃんはほんまバレバレやねん」
「なんか残念だね」
「ほんまに、もうええ年やねんからしっかりして」
「なんか腹立つ！ほっといて！」
楽しそうに笑うその顔も。
結構本気で可愛いと思ってんねん。
「……可愛い」
思わず漏れた言葉に、Aちゃんが驚いて、目をまん丸にするから笑ってしまう。
笑う俺にまたからかってるって、Aちゃんが目を伏せた。
ほとんど無意識に顔を覗き込む。
「なぁ、それって照れてんの？拗ねてんの？」
「…照れても拗ねてもいません」
至近距離で目が合って。
そう、無意識に…手が伸びる。
…ちゃうわ。
さっきから可愛いくて、触れたくて仕方なかってん。
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作者名：咲菜 | 作成日時：2022年4月3日 21時
