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「彼氏かぁ…」
「え？急に何？」
「え？忠義くん？いたの？」
「え？ずっとおったやん！頭大丈夫？」
カウンターに座る忠義くんが目をまん丸にして驚いている。
なんの偶然か、村上さんが帰った後しばらくして、1人でやってきた忠義くん。
カウンターに座って、ビールちょうだい？って無駄に可愛い笑顔をみかちゃんに振りまいていた。
「起きてんのにそんな意識ぶっ飛ぶ事ある？」
「…疲れてるのかも」
「わー、アカンやん。ここ休みないん？」
「や、あるある。月2回くらい」
「…死ぬんちゃう？」
「やめて！」
物騒な事をヘラヘラ笑いながら忠義くんが言うから私もつられて笑ってしまう。
「働き過ぎやって。Aちゃん癒しあるん？」
聞かれてふと考えるけど、毎日店と家の往復を繰り返していて、何も浮かばない。
それこそ彼氏でもいたら、一緒に過ごす時間が癒しにでもなるのかもしれないけど。
そんな人はいないし、頭の中はほとんどお店の事で埋め尽くされている。
「癒しねぇ……料理してる時かな」
「それ仕事やん。もう末期やん」
なんとか絞り出した答えに、忠義くんが間髪入れずに言ってくる。
うん、わかってる。
今改めて考えたら、私ってなんとも寂しい生活してる事に気付いて自分でも悲しくなってるからやめて？
「癒してあげよか？」
「…確かに忠義くんのその可愛い笑顔は癒される」
「んふ、素直やね〜。俺で良かったらいつでも癒してあげるで？」
そう言いながら忠義くんがアイドル誌に載るような笑顔を振りまいてくる。
手まで振ってくれてる。
私と同じ年のおじさんのはずなのに、普通に可愛い。本当に癒される。
とはいえ、好きな事やらせてもらってるわけで。
毎日充実してるのは本当。
常連さんとカウンター越しにする話しは楽しいし、美味しかったって笑顔を見せてくれるお客様を見れば疲れも吹き飛ぶ。
癒しと言えば、充分癒しだ。
更にこんな風にアイドルの忠義くんが可愛い笑顔を振り撒いてくれてるし、むしろ贅沢なくらい。
ありがとと、私も笑って返した。
「…それにしてもほんと綺麗なお顔だねぇ」
「そう？まぁ、アイドルやらせてもらってますから」
「いいなぁ。私もそんな顔に生まれたかったなぁ」
「んー？Aちゃんは普通に可愛ええで？俺も癒してもらってるもん」
「忠義くんは可愛い彼女が癒しでしょ」
「うわ、その話は今はせんといて」
「えぇ？なんかすみません」
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作者名：咲菜 | 作成日時：2022年4月3日 21時
