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ニコニコと笑顔のままの彼女に小さく頭を下げた。
「ありがとうございます」
「忙しいのにごめんな。どうしても話してみたい言うて聞かんから」
「だってぇ」
「だってちゃうねん。もうええやろ？」
えー、と口を尖らせる彼女さんは本当に可愛らしい。
それを優しい声で嗜める忠義くん。
「Aちゃん仕事中やねんて」
「店長さん、Aさんて言うんですか？」
「気にするとこそこちゃう。仕事の邪魔やろ？ワガママ言うなて」
何やら言い合ってるけど、そんな姿が微笑ましい。
何より絵になる。
こんなに絵になるカップルがいるもんかと、ついつい見惚れてしまう。
「Aちゃんも、人の顔見てニヤニヤせんといて」
せっかくだから目の保養にと思って、ちょっとだけその姿を拝ませてもらっていたら、いつの間にかこっちを見ていた忠義くんに注意されてしまった。
別にニヤニヤ見ていたつもりは決してないんだけど。
慌てて頭を下げて個室を後にした。
しばらくして個室から出てきた2人。
彼女さんがわざわざカウンターを覗き込んで、私を呼んだ。
「ご馳走様でした！また来ていいですか？」
「是非、お待ちしてます」
笑顔で答えると、彼女さんはそれは綺麗な顔で微笑み返してくれた。
その顔にやっぱり天使かもしれないと、1人キュンとしていると、みかちゃんが白い目でこっちを見てる事に気付いた。
「彼氏いないからって可愛い女の子にキュンキュンしてる場合じゃないです」
「…彼氏いないの関係ある？」
「どうせなら大倉さんの方にキュンキュンして下さい」
どうせならとは言われても、何もないのにキュンとは出来ない。
それに忠義くん相手だと、絶対また落ち着かなくなってしまうから、出来れば遠慮したい。
「さ、仕事しよー」
「なんか誤魔化してませんか？」
それなのにみかちゃんのせいで思い出してしまった忠義くんのニッコリ笑ったあの顔。
本人はいないのにその笑顔を思い出すだけでキュンとさせるなんて、忠義くんはなかなか凄いかもしれない。
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作者名：咲菜 | 作成日時：2022年4月3日 21時
