Important Story.4 (短編集)

F#15(ﾘｸ) ページ6

「うーさむ」







もう4月なのにほおを撫でる風は相変わらず冷たくて、指先も冷たくなってきた。





上着持ってきて良かったぁなんて思いながら旦那様を待つ。









「おまたせ」

「うん、おまち」

「おまちってなに(笑)」

「なんだろう(笑)」








なんとなく出てきたのよ。

不思議よね、？









「何時にホテルに戻ればいいんだっけ？」

「何時でもいいって。遅過ぎなければね」

「そっかそっか」

「ほら、手出して」

「ん、」









差し出された彼の手に自分のを重ねると、

冷たっ！！

という声が聞こえてきた。









「冷えた？ごめんね」

「ううん。私が急に来ちゃったから」

「うーん」









何かを考えていた彼はふいに私と向かい合って、私の手を両手で包み込んだ。

はぁーっと息を吹きかけられて、私はびっくりしたけれど、彼は得意気に笑ってる。









「あったまったでしょ？」

「すぐ冷えちゃうかもよ？」

「そしたらまたあっためてあげる(笑)」

「ありがとう」

「どういたしまして」









見上げた彼の顔はまたまた得意気で

子供みたいね。









「どうかした？」

「ううん」

「あ！！ねぇ見てあれ！！！」

「ん？」

「あの人形卓さんにそっくり！」

「なお、怒られるよ(笑)」









ショーウィンドウに並んだゴリラのぬいぐるみ。

たしかに似てる、(笑)









宝物を発見したように喜ぶなおはすごく可愛くて、


心の底から、本当に大好きな人なんだ。









(はじける笑顔があたたかい)

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