第6話 幸せと不幸 ページ7
少しすると、顔の上からうふふと笑う声が聞こえた
｢で？お相手は切島ちゃんでしょ？｣
｢っごほっごほっ｣
びっくりしてむせちゃった
え、まさか
｢けっこうわかる人にはわかるわよ。明らかに他の人と態度違うし。切島ちゃんは鈍ちんだから気づいてないと思うけど｣
｢え、そ、なの？｣
そう、なのか
これからはもっと気をつけないと
絶対に本人だけには気づかれたくない
いやでも、恋してる僕を映してほしい
あーじゃなくて
｢あら、混乱させちゃったみたいね。ごめんなさいね？でも、今のままでいいと思うわ。いろいろと障害がある分、それくらいはね｣
｢そうかな？いいの、かな｣
｢いいわよ、それくらい。アンタが切島ちゃんと付き合いたいならもっとアプローチしなきゃいけないけど｣
｢それは！しない、から｣
絶対に
彼は女の子が好きで
だから、普通に幸せになってほしくて
こんな格好して追いかけてる僕が言えることじゃないけど
女の子と結婚して、子供を授かる
そんな未来が、彼の望む未来のはずだから
｢けど、そうね。一つだけ覚えていて欲しいことがあるわ｣
スッとこちらを見たと思ったら、とても真剣な顔をしていた
僕も彼の方をジッと見る
｢同性で付き合ってる人も少ないとはいえいるわ。だから、頭ごなしにそれを“不幸”だと決めつけることはしないでね。確かにいろいろと大変だけど、とてつもない幸せだって笑う人もいるから｣
それを聞いて僕は、驚いてしまった
そうか
男同士でも、女同士でも
それがお互いの幸福なら、不幸の道ではない
なぜだか僕には漠然とした思いがあった
同性同士は、不幸の道筋だと
けど、そうじゃない
それもその人の選んだ、幸せの道なんだ
周りからの理解は難しいかもしれないけど
それが、その人の幸せなんだ
｢わかった｣
｢そう。ありがとう。アンタも、両想いになれたらくっつけばいいのよ｣
そう言ってくれた
とても嬉しかった
けど、僕は首を横に振る
｢たとえそうなっても、僕は彼とは絶対に付き合わない。まっすぐに恋をしてる人達に申し訳ないもん。それに、僕を好きになってくれても、それは“女の子”で“紀田出水”だから｣
だから、そんな都合のいい夢は見ない
ああ、恥ずかしくても、男の姿で一生懸命になるんだった
こんな嘘ばっかりの“私”じゃなくて、“僕”として、頑張ればよかった
ちょびっと、ちょびっとだけ後悔した
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作者名：悠莉@菜種油 | 作成日時：2017年6月13日 5時
