53匹 ページ7
殺されかけたが今は一応俺の守り手の様な者だし、天使消したらその神とやらにどんな災い吹っかけられるか想像したくもない。
天に帰るだけっていう可能性もあるが文字通り消滅の可能性もある。
一応話とかねぇと。
俺は猫をそっと机に置くと太宰治から距離をとって座り直す。
反感を買わないようににこりと微笑んでおけば完璧だ。
天使猫は机から俺の膝に飛び移り、俺の右肩──太宰治から最も離れた場所へと移った。
だが太宰治は慣れてるのか「あれま」と呟いて笑うと乱歩の隣に座った。
「それで乱歩さん、何処まで話されたんです?」
「んー?
この猫が美麗の異能生命体ってトコまで。
コイツの目的は凡そ察しがつくけど云わない方が良いんじゃないかなと思ってさ。
後々面倒だし」
「⋯⋯そうですか、判りました」
俺の事なのに蚊帳の外ってのは気分良くねぇな。
天使猫も俺の肩の上で爪立ててやがるし2倍気分悪ぃ。
「じゃあ話はこれで終わり、解散」
パン、と乱歩が手を叩き、俺が会話に加われないままお開きとなった。
立ち上がった太宰治に誘われ俺も社長室を後にする。
乱歩に手を振って「行ってらっしゃーい」と云われては行かないわけにはいかないからだ。
耳元でフーフーいってる天使猫を撫でて黙らせ、太宰治に着いていく。
「君は乱歩さんの助手になったけど此処は『探偵』と名が付く組織だ。
加えて君は異能力者。
この社では能力者は皆調査員として仕事をしているから、君も調査員として働いてもらうよ」
俺は特に何も考えず了解の返事をする。
拒否権があるとは思えねぇし、ずっとあの大きな子供の世話するより有意義そうに思えたからだ。
太宰治に続いて事務フロアに戻ると先ず名刺を渡された。
社の名前、所在地、そして俺の名前が書かれている。
名刺を持つと急に社会人になった気がして少しそわそわする。
アルバイト禁止だったから働いたこともなかった。
向こうの世界で『生かされている』よりもこちらの世界で『生きている』ほうがずっと有意義で楽しそうだ。
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作者名:笹山花音 | 作者ホームページ:
作成日時:2019年3月25日 10時