51匹 ページ5
「下界に生まれ落ちたとは云え、お前は天使。
妖共も噂を聞き付け、力を得ようと連日連夜お前の元に押し寄せる。
大抵の者は力を蓄えて帰っていくが、中にはお前を殺して喰らい、さらなる力を得ようとする物も居た。
そんな奴らを我は毎日返り討ちにしてやっていたのだ」
手を舐めて毛繕いをする猫。
人間の姿だったらすごいドヤ顔するんだろうな、この人の話を無視する猫野郎は。
「そして人間にとっては長く、我らにとっては一瞬の年月が過ぎた。
偉大なる我らが父は再び我を御身の元へ呼び戻された。
そして我に今後の計画を教えてくださり、新たな命をお与えになられた」
毛繕いが終わり、猫は伸びをする。
「その計画と命令ってのは何だ?」
「実行中の計画だ、教えるわけなかろう」
しっぽをパタンパタン、と机に打ちつける。
本で猫が尾を叩きつけるのは不機嫌な時って書いてあったな。
そうか、この猫は不機嫌なのか。
俺は衣囊からティッシュを一枚取り出す。
「俺のトラック衝突はその計画の内か?」
「ああ、そうだ。
それを実行するには向こうよりこちらの方がやりやすいのでな」
ティッシュを裂き、こよりのひらひらが長いやつを作る。
それを猫の前で振れば、やつの前足がぴくぴくと動く。
「乱歩が云うにはお前は俺の異能で、俺はお前を操れる、と聞いたんだが?」
目の前で大きく振れば、ついに奴の前足がこよりを捕らえようと動き出した。
こよりの動きに首ごとついてくる。
「異能力⋯⋯まあ、我がそうなのだろうな。
偉大なる我らが父により、お前を護り、従えと云われている」
「こっちに来てから妖の類を一切見ないのはお前に関係してるのか?」
「ああ、俺が見えなくした。
見えていても、邪魔だろう?」
こよりに必死に食らいつく姿は本物の猫だ。
大きさが違う、という事以外は習性も含め猫になるらしい。
「ちょっと見えるようにしてみてくれ」
そう頼むと、次の瞬間んには周りにヒトでないモノが沢山居た。
粉を散らしながら飛ぶ妖精、俺も膝の上で眠る狸みたいな奴、色々居た。
「やっぱいい、戻してくれ」
頼めば、奴らは一瞬でみえなくなった。
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作者名:笹山花音 | 作者ホームページ:
作成日時:2019年3月25日 10時