62匹 ページ16
11月27日 晴天
1ヶ月が過ぎた。
元の世界で死にかけて、そして中島敦に助けられて乱歩に拾われて今日でひと月。
まだ『慣れた』とは云えねぇが、どうやって生きればいいかは何となく判ってきた。
探偵社員の名前も言えるようになった。
ここに来て俺は信じられないくらい成長した。
先月の俺に今の俺を紹介したら、見た目そっくりな別の人間だと思うだろう。
今の俺もそう思ってる。
探偵社に入ったばかりの頃は、取り敢えず現実を理解し、どうすれば良いのかを考えながら行動していた。
この世界は元の世界と似てるようで全然違う。
先ず軍がある。
武力を持たないことを憲法でうたっていた日本だが、こちらではそうじゃないらしい。
世界大戦は3回あって、2回目で勝って3回目で負けた。
勝ったから大日本帝国のままで、そして悲劇を繰り返さぬようという想いもない。
戦うのやだなーという程度の認識らしい。
しかも驚いたことに、3回目が終わったのは14年前。
超最近。
俺生まれてる。
異能というものがあるだけでも理解が難しい世界なのに、大戦が3回もあったんなら世界史のテストでまとも難点を取ることは出来ねぇだろうな、俺。
また、軍があるからか、異能があるからかどっちかはわからんが、子供でも銃が買える。
乱歩曰く、行くとこ行きゃワンコインで弾もセットで買えるらしい。
どこで買えるかは聞かなかった。聞いたところで俺に用はねぇし。
林檎と同じくらいの値段で買えてしまうらしいから、それを聞いた時は思わず命の残基を聞いた。
勿論1個だった。
ただの人間が銃を持つことは違法らしいから、その程度の治安維持法はあるらしい。
ワンコインで買えるけど。
そして最後に、異能力。
この辺の人達は異能の存在を認知してそういうものだと理解してるらしいが、地方の人達は異能を知らなかったり、インチキの類だと思っていたり、戦争の原因だと忌み嫌ってたりするらしい。
俺が異能について知らなかったのは周りに異能力者が居なかったからじゃねぇのかなって思ったけど、大戦は3度も起きてねぇし軍もねぇし、何よりこの世界は根本から違う世界だってことを思い出してすぐ却下された。
この世界は俺の知ってる世界とだいぶ違くて混乱はするけど、元の世界よりも遥に生きやすい世界だ。
多分、乱歩が居るから。
初めて私が俺であることに気付いてくれた人。
彼がいなければ俺はきっと私だった。
だからお前には感謝してる。
礼を言ってやるからこの日記閉じろ、乱歩。
乙女の日記を読むんじゃねぇ。
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作者名:笹山花音 | 作者ホームページ:
作成日時:2019年3月25日 10時