長谷川慎 ページ46
最近の悩み。それは、
「あ、こんばんは」
『……』
マンションのお隣さんの男の人。
挨拶しても会釈するだけ。なんて無愛想なんだ。
親から、挨拶をしっかりするようにって言われて育った私からしたら意味が分からない。
しかもいっつもキャップ深く被ってるし、マスクしてるし、かと思えば派手な色のパーカー着てるし…
よく分からない人だなって、
そんな印象だった。
「えー…どこいったんだろう…」
ある日のこと。
バイトから帰ってきて家に入ろうとすると鍵が見つからない。
かばんをひっくり返しても出てこなくて、どこへやったか必死に記憶を辿る。
「あ、あれだ…」
たぶん、だけど。
帰る時に、店長とぶつかってかばんの中身をばら撒いたんだ。
その時、床かどこかに落としたんだろう。
取りに行こうと思ったものの、今日のシフトがラストまでだったのもあり、今は23時40分。
バイト先までは電車で2駅。
帰ってくるのに、終電がまだ動いているかが分からない。
どうしようもない事態に、ドアの前にずるずるとしゃがみ込んだ。
「どうしよう…」
『どうしたんですか』
頭の上から落ちてきた声。
聞いたことがない声で、誰だろうと見上げると、
「え…、」
例のお隣さんだった。
こんな声だったんだ…って、今そんなことどうでもいいか。
『座り込んで、どうしたんですか』
「あ…、えと、鍵をバイト先に忘れてしまって…」
『鍵…』
「……」
『……』
沈黙。気まずい。
そりゃあ、急に鍵がないって言われても困るよね！
「あ、足止めさせてすみません。私、行きますので…」
『どこ行くんですか』
「えっと…ぉ、…」
行くあてなんてない。
友達もいるっちゃいるけど、こんな時間に訪ねたら迷惑だし。
でも、それをこの人に言ってもしょうがないし。
『どこ、行くんですか』
キャップとマスクの間から覗くきれいな目にまっすぐ見つめられる。
嘘が、つけない。
「ど、どこ…にも、行けません…」
『っふ、』
微かだけど笑う声がした。
かぁっと顔が熱くなる。
どこにも行けませんって！
笑われるに決まってるじゃん。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 588人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「THERAMPAGE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ささみ(プロフ) - べべ臣さん» いえいえ！いつでもリクエストお待ちしております！ (2020年6月11日 19時) (
レス) id: d139597d81 (このIDを非表示/違反報告)
べべ臣(プロフ) - コメントして気づきました(T . T)読ませていただきます！また読みたいのができたらリクエストさせていただきます！ (2020年6月11日 18時) (レス) id: abe62a022f (このIDを非表示/違反報告)
ささみ(プロフ) - H。さん» コメントありがとうございます！いっくんの噛み癖！えちえちいっくんっぽいやつ書かせていただきます！！リクエストありがとうございますー！！ (2020年6月11日 17時) (レス) id: d139597d81 (このIDを非表示/違反報告)
ささみ(プロフ) - べべ臣さん» コメントありがとうございます！壱馬くんの嫉妬&喧嘩のお話は『らんぺのがるふれちゃん� 戮諒�で作ってあります！そちらの方お読みいただけると幸いです…！！ (2020年6月11日 17時) (レス) id: d139597d81 (このIDを非表示/違反報告)
H。(プロフ) - いっちゃんの噛み癖のお話読みたいです！ (2020年6月11日 7時) (レス) id: b90174957d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ささみ | 作成日時：2020年5月21日 13時
