#84 ページ34
「…俺には…父しかいなかった。
……教員だったんだ」
『……先生……？』
「…君は、亡くなった両親に会いたいんだろ？」
『……ッ……』
まだ話していない筈だったのに、私が星に願った相手をあなたは知っていた。
『……どう…して……』
「…君が、泣きながら俺に言った。
訓練兵に志願したのは生きる為だった。
９歳の時に母が倒れて……独りになったと」
『……そっか、起きてたんだ』
いつ独りになるか、いつ死んでしまうか…なんてことは、兵士でなくたって変わらないこと。
だけどそんなことを恐れてしまう、私の独り言を、眠った筈のあなたは聞いていたみたい。
「そんな兵士で、調査兵団団長の分際で……俺が今から言うことは間違っている…かもな」
こんな世界でいずれ、無意味に死んでしまうことをもう…あなたも私も知っている。
それでも冷えた指先を重ねてくれるあなたが、とことん優しい人だということも。
『……え……？』
『……ッ』
「…いつかウォール・マリアを奪還し、シガンシナ区にある君の両親に挨拶ができたら」
「……」
あなたがくれた銀色の指輪を、その夜からずっと左手の薬指に抱いたまま。
「こんな俺の…家族になってくれないか…？」
９歳で独りになった時はただ寂しくて、ままならないで兵士になった……だからこそ。
─ただただ涙が溢れてから、頷いて、
こんな世界でもあなたと生きていたいから…同じ指輪をしていること。
愚かな本当の願いをやっと…あなたの腕の中で夢の中で、思い出したよ。
▽
▼
▽
有明の前に、目が覚めた私の体を
エルヴィンが後ろから抱き寄せて、焦がれるみたいに肩に顔を埋めた。
「…すまない」
なんて…低い声で思い詰めているから。
何事かと思って、はだけた服と自分の体を見たら。
『ふふっ。
あなた、だからね…いいよ』
しばらく髪も結えないし、袖も捲れない。
背を向けた鏡には…あなたがつけた痣と爪の痕とが映る。
同じ輪をした指をあの日みたいに重ね、伝えると、私を瞬いた青色の目。
『あのね……
繰り返して素直に言えないで、あなただけに抱く飽きもしない花言葉。
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氷飴（こおりあめ）(プロフ) - 宇宙。さん» 宇宙。さんが綴られた可愛くて和やかなお話のきっかけ(…に、なれたと自惚れていいのでしょうか)に少しでもなれたのかと思うと本当に嬉しいです^^*それだけでなくCSSまでお褒めいただき…。本当に、温かなお言葉をありがとうございました！ (2019年6月22日 12時) (
レス) id: 885b609761 (このIDを非表示/違反報告)
宇宙。(プロフ) - 氷飴（こおりあめ）さん» 自作なんですか！すごいです。。これからもcssとお話のどちらも楽しみに待ってます！！そういえば、氷飴さんに触発されてさっき小説を初めて書き始めました。もし見ていただけるなら…なんて厚かましいですが、覗いていただけたら嬉しいです！長文失礼いたしました。 (2019年6月22日 12時) (レス) id: 003422f1aa (このIDを非表示/違反報告)
氷飴（こおりあめ）(プロフ) - 宇宙。さん» 宇宙。様初めまして！コメントありがとうございます。梅花黄蓮から一気読みしていただいたとのことで…嬉しいやら恐れ多いやらで心臓がばっくばくな私です…��(･ω･ﾉ)ﾉありがとうございます、これからも頑張ります！CSSは自作しております^^* (2019年6月22日 11時) (レス) id: 885b609761 (このIDを非表示/違反報告)
宇宙。(プロフ) - ところで、このｃｓｓとても素敵です！！ご自分でおつくりになったのですか？ (2019年6月22日 11時) (レス) id: 003422f1aa (このIDを非表示/違反報告)
宇宙。(プロフ) - 初めまして！梅花黄蓮からここまで一気読みしちゃいました。これからも頑張ってください！ (2019年6月22日 11時) (レス) id: 003422f1aa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：氷飴 | 作成日時：2018年4月16日 19時
