指名手配犯と店主 ページ9
「ところでAちゃん。今日は淳くんの紹介の為だけに来た訳では無いのだよ。」
「……と言いますと?」
カチャリと太宰さんがカップを戻し、懐から1枚の写真を取り出した
「この男に見覚えは?」
目の前に差し出された写真を見るとそこには_______
「路地裏の……?」
真っ黒な外套に特徴的な髪型
そして光の差し込まない瞳
″彼″だと判断するには十分すぎるほどにその写真は鮮明だった
「知っているようだね。」
額に手を当て、いかにも不機嫌そうに深いため息をつく太宰さん
「知っているというか、先日路地裏で顔を合わせただけです。それが何か?」
「なっ、芥川と会ったんですか!?お怪我は?何もされませんでしたか?!」
ガタタッと派手な音を立て、淳くんが立ち上がる
「まぁまぁ落ち着きたまえ淳くん。Aちゃんがちょっと引いてるから。」
「あっ!す、すみませんっ!」
いえ、大丈夫です。とだけ返し、先日の出来事を話す
″お店に来る約束をした″という所だけを省いて
二人の反応を見て、無意識のうちに言わない方が良いと判断して。
「な、あいつ!女性にまで!」
強く拳を握り、嫌悪感を露わにした淳くん。流石に何があったのか気になり、太宰さんに尋ねてみる
「あの、この男性がどうかしたんですか?」
「彼は指名手配犯でね。先日彼が、ここの名刺を持っていたものだから、念の為確認に来たのだけど…」
あー確かに指名手配犯っぽい様子だったなぁなどと当時のことを思い出していると、急に太宰さんに二の腕を掴まれる
「あの?太宰さっ……?!」
気がつくと目の前には太宰さんの顔
すぐに腕を引っ張られたのだと気づくが、思いのほか力が強く離れられない
「Aちゃん。君はもう少し危機感を持った方がいい。」
11人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:しゃちほこ | 作成日時:2018年3月14日 21時