彼女で先輩で部下［文スト］ (ページ2)

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些細な事ページ2

何故手を握らないのか。
何故太宰さんがそれに対して何も言わないのか。

実のところを言うと、私は1度も彼に触れたことがないのだ。

以前1度だけ、彼と交際を始めて間もない頃に手に触れようとしたことがある。

その時太宰さんは、

「A、私たちは確かに交際しているが、そこまで許したつもりは無いよ？」

冷たい、射殺すような目

私は太宰さんが初めての恋人だが、この目は恋人に向けるようなものなのかと疑う程だった。

「考え事かい？」

ハッと気がつくと不思議そうな顔をした太宰さんが顔を覗き込んでいた。

「いえ、何も。ほらさっさと帰りますよ！」

「え、ちょ、Aっ？」

ほぼ引き摺るようにして太宰さんの袖を引く。

探偵社では国木田さんが首を長くして待っているはず。一刻も早く彼の元へ太宰さんを連れて帰らなければ胃に穴が開いてしまう。割と真面目に。

触れさえしなければ優しい恋人

賑やかな職場

こんな当たり前の日常がもうすぐ崩れ去るなど、この時の私は考えもしなかった。

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿Who is a liar?