１３話 ページ13
時刻はお昼前。
午後１５時頃まであるセーヌ川クルーズ集合場所の桟橋に着くと
ツアーコンダクターの方の説明が始まり乗船前に席の抽選くじを引かされる。
今回、うちの会社での貸切なので本来は席によって価格が違ったりするのを
平等に扱うため社内旅行に携わっていた社内の人たちがくじを用意していたらしい。
出来れば窓際とかになりたいけど…
そんな事を思っていると自分の番がやってきてくじを引いた。
引いたくじと船の座席表を確認すると前よりの窓際の２人席だった。
生「やった！ 船前方の特等席！」
生田くんがめっちゃ喜んでいる。
生「お！ 土田さんはどこだった？」
他の同僚たちとおしゃべりをしていると私の姿を見つけた生田くんが寄ってきた。
同僚たちがキャーキャー横で言っている。
主「わたし？ 前よりの窓際！」
そう言いながらくじを見せる。
生「ふ〜ん。…やったね」
意味深にそれだけ言うとサッサと去って行った生田くん。
同１「いいな〜。生田くんと仲良くて〜」
同２「ホント羨ましい〜。私も同じ部署なのに全然接点ないんだもん…近寄れないよ…」
主「話しかければいいのに〜。気さくに話してくれるよ！」
同２「無理だよ！ 部署一緒でも課が違うのに話してたりしたらファンクラブに何言われるか」
主「・・・ファンクラブ？」
同１「…知らないの？ うちの会社のイケメンファンクラブ」
主「イケメンファンクラブ？」
同２「そう。アイドル５人衆はもちろん個々にファンクラブがあるけど他にイケメンファンクラブがあるの」
主「…そうなんだ…生田くんもその一人なのね」
同１「だから、むやみに話しかけたりしたら後が怖いの」
同２「そうそう」
主「じゃあ私も気を付けたほうがいいよね？」
同１「土田さんは同じ課で仕事してるんだから大丈夫…なはず」
主「そっかな…なんか心配…」
そんな話をしていると船への乗船が開始されて順番に乗り込む。
ええと…私の席は…あった！
席に着き外をみる。
なかなかのいい席。
向かいに座る相手はまだ来てないけど女の人だといいな。
そんな事を思って周りを見渡すと前方の席で生田くんが項垂れている。
どうしたんだろうと思って見ていると、どうやら同じテーブルの人達が幹部の方達らしい。
それは緊張するかも…。思わず笑ってしまった。
その瞬間、向かいの席に手をかける人が視界に入った。
慌ててみると…櫻井さん…だった。
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作者名：笹栗
| 作成日時：2015年9月1日 20時
