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第6話 : 大舞台 ページ8

式は順調に進み、ついに私の出番がやってきた。


「続いて、新入生代表挨拶です。立川Aさんお願いします」



私は大きく返事をして立ち上がる。



「頑張れ」


流星が小さな声で私を応援する。


私は頷き、肩の力を抜いてステージに登壇した。




それからのことはほとんど記憶にない。


大勢の生徒を前にして、頭が真っ白になっていたらしい。



気づけば私は生徒たちからの拍手喝采を受け、そこに呆然と立ち尽くしていた。



うまく話せたのかどうかは分からないが、教員の席で星野先生が満足げに笑っているのが見えた。




まだ震える足を必死に動かして席に戻ると、流星は感激したように笑顔で迎えてくれた。


「お疲れ様」


「ありがとう」


今日一番の大仕事が終わり、思わず安堵のため息が出た。
 
 




「それではこの後は、各クラス教室に戻ってLHRを行ってください」



教頭が言うと、教員の席から各クラスの担任が立ち上がる。



そしてクラスごとに分かれて座っている生徒たちの前まで来て、教室への案内を呼びかけた。




 1組から講堂を出て行き、しばらくして私たち3組が講堂を出る番になった。



「よーし、じゃあ教室に移動するぞー」


星野先生が言うと、生徒たちは立ち上がる。


他のクラスからの視線を受けながら、私たちは一列になって講堂を出た。






「Aは寮生なの?」


流星に聞かれて私は首を横に振る。



この学校には各県から生徒が集まっており、通生と寮生から成っている。



「流星は?」


「俺は横浜から来たんだ」


「そうだったんだ」


「Aはどうしてこの学校に通うことになったの?」


「私は──」



答えようとして思わず口籠る。


私がこの学校を選んだ理由は人に語れるほど大したものではないし、むしろ自分と向き合うことを恐れた結果だ。




「あ、ごめん。嫌なら無理に言う必要はないよ」


流星は、往生際が悪い私に優しくそう言う。



「ううん、私こそごめん」


「Aが謝らないで。でも、少しずつでも知っていけたらいいな、Aのこと」



柔らかい笑顔で私を見つめる流星に、どこか心が安らぐ。




こんな弱い私のことを、受け止めて、気遣ってくれる人がいる。



それがどれだけ幸せなことか、この学校に来なかったら私は気づけなかったかもしれない。





そう考えるだけで、この学校を選んだことに対する価値が見出せる気がした。

第7話 : 笑顔→←第5話 : 入学式



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作者名:佐々木さん | 作成日時:2020年12月7日 2時

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