第5話 : 入学式 ページ7
入学式当日。
新入生は学校の広い講堂に集められた。
私以外の生徒もどこか緊張した面持ちで佇んでいる。
一方で、既にグループを作って仲良く話をしている生徒もいて、少し不安になる。
「A、おはよう」
「星野先生」
講堂の前で座席の確認をしていると、黒いスーツを全身に纏った先生が声をかけてきた。
春の陽気のような昨日の雰囲気とはまた一味違い、クールな印象を与える。
「緊張してる?」
「少しだけ」
「俺は端っこで見てるから」
星野先生はそう言って笑い、時計を確認して慌ただしく去っていった。
私は昨日、この学校に足を踏み入れた時と同じように、大きく深呼吸をする。
そうして意を決して、講堂に入った。
席に着いて式が始まるまでも、私はずっと代表挨拶のことが頭から離れなかった。
こんなに緊張しているのは久々かもしれない。
今まで劣等生だった私は、人前に立つ機会すら与えられて来なかったからだ。
「大丈夫?」
「え?」
「なんか、すごく緊張してるみたいだから」
緊張が表に出てしまっていたのか、隣の席に座る男子生徒が声をかけてくれた。
「あ、このあと代表挨拶があって…すごく緊張してるんです」
「へぇ〜すごいなぁ。あ、俺横浜流星って言います。同じ3組だからよろしく」
横浜流星と名乗る彼は、座ったまま軽く私に会釈する。
睫毛が長く、品性のある美しい顔立ちに見惚れてしまいそうだ。
「私は立川Aです。よろしくお願いします」
「よろしく、A。タメ口でいいから」
彼はそう言って爽やかに笑う。
「じゃあ…よろしく、流星」
「うん、よろしく」
丁度挨拶を交わし終えたところで、教頭先生がマイク越しに話し始める。ついに入学式の幕開けだ。
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作者名:佐々木さん | 作成日時:2020年12月7日 2時