第18話 : 部活探し ページ20
「そういうわけで、なんかいい部活ないかな?」
「って言われてもねえ」
私が言うと、美桜は苦笑した。
「Aは何か興味があることとかないの?」
「ピンとこないなあ」
投げかけられる質問に大した返事もできず、自分で自分が情けなくなる。
「じゃあ…授業の先生に聞いてみたら?その先生が顧問をやってる部活のこととか」
「まあ確かに、この学校は部活も多いしね」
芽郁に続いて美桜が言った。
規模の大きなこの花峰学園は、多方向に展開される部活で有名な学校でもある。
生徒の魅力を活かせる場所が、ごまんとあるはずなのだ。
「とりあえず、そうしてみる」
私は自分の興味が持てる部活があるかもしれないと思い、芽郁の提案を実行することにした。
しかし何人かの先生に聞いてみたものの、熱量の凄さに圧倒され、期待には応えられず時間が過ぎていく。
そんな中、三限の音楽の終わり頃に綾野剛先生と話をする機会があった。
「へえ〜興味のある部活を探してるんだ。いいじゃんいいじゃん」
綾野先生はグランドピアノに頬杖をつきながら、楽しそうに笑う。
「でもなかなか難しいですね、これだけ選択肢があると」
「そうだね〜。ちなみに軽音部はどう?」
先生は期待に満ちた眼で此方を見つめる。他の先生たちにも向けられた眼差しだ。
「すみません、音楽はどうもセンスがなくて」
「そっか〜、残念」
残念、といいつつも、綾野先生は笑顔のままだ。
「Aはさ、得意なこととかないの?」
「それが…勉強以外何もできなくて」
「勉強ができるなら、それで十分じゃない?」
「え?」
部活探しをしている私に返ってきた言葉が意外だったので、私は思わず口を開ける。
「勉強が得意なら、それを伸ばせばいいじゃん。無理に部活に入らなくても」
「でも、星野先生は力を活かせる機会をつくってあげたいって…」
「源ちゃんはさ、Aが心からやりたいと思ってることを、思う存分やらせてあげたかったんじゃない?親とか環境に囚われないでさ」
星野先生がかけてくれた言葉の真意を知り、私は心が半分軽くなった気がした。
「大好きな勉強を好きなだけやりたいって伝えれば、源ちゃんも喜ぶと思うよ」
綾野先生は微笑む。
その笑顔に、心が救われていく。
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作者名:佐々木さん | 作成日時:2020年12月7日 2時