第17話 : 放課後の楽しみ ページ19
なんとか一日を終えることができた。
中学校の頃よりは勉強量も減り、自由な時間は増えているはずなのに、とてつもなく疲れた。
今まで避けてきた、"人と関わる"時間が増えたからだろうか。
ショートホームルームが終わり生徒が教室を出て行く中、私は大きくため息をついて机に顔を伏せた。
「お疲れ様」
星野先生が声をかけてくれた。
「お疲れ様です」
「今日はどんな一日でしたか？」
「今日は…なんだか散々な一日でした」
星野先生に聞かれたので、私は答える。
「あら、どうして？」
「どうしてって…星野先生も知ってるんじゃないんですか？授業中に寝たこと」
「さあ、何のことやら」
星野先生はわざとらしく目を逸らした後、私が睨みつけているのを見ると笑った。
「でもその様子だと、いろんな人と関われたみたいだね」
「まあ、それは」
私が言うと、先生は自分のことのように嬉しそうな表情を浮かべる。
「A、部活入ってみたら？」
「部活ですか？」
「うん。きっと中学の頃は勉強に集中してばかりだったんだろうし、滅多にない機会だよ」
星野先生はそう言うが、私はあまり部活に入りたいと思わなかった。
星野先生との、放課後のこの時間が奪われてしまうと思うと、少し寂しい気がしたから。
「明日、部活動見学にでも行ってみたら？」
「そうですね…」
「どうかした？」
私が浮かない顔をしていたので、星野先生は心配そうに聞く。
「先生とおしゃべりする時間が減っちゃうのは、嫌です」
直接そう伝えるのが少し恥ずかしくて、私は思わず下を向く。
すると星野先生は腰をかがませて、私の目を見て言う。
「それはどうも」
先生も、どこか照れくさそうに笑った。
「でも、Aの力を活かせる機会をつくってあげたいんだ。お喋りなら、呼んでくれればいつでもしますとも」
私はその言葉を聞いて嬉しく思った。
私の力を活かせる場所、
そんな場所がこの学校のどこかにあるのだろうか。
たとえ見つけるのが難しかったとしても、星野先生の期待を無駄にはしたくないと思った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 40人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：佐々木さん | 作成日時：2020年12月7日 2時
