検索窓
今日:6 hit、昨日:46 hit、合計:24,159 hit

33 ページ36

窓の向こうは先程迄厚い雲に覆われていた月が
青白く光り此方を見ていた
すると倉庫の奥の方から物が落ちる音がした
敦は座っていた木箱から落ち
音のした方を怯えた目で見る

敦「い、今、奥でも物音が」
が、太宰はそうだねと、嫌に落ち着いた様子で
手元の本を読んでいた
Aも敦を見ただけで何もしない

敦「きっと奴ですよ太宰さん!」
太宰「いや、風で何か落ちたんだろう…」
敦「ひ、人食い虎だ
  僕を食いに来たんだ」
太宰「落ち着き給え敦君」

太宰は先程迄読んでいた本をパタンと閉じた

太宰「虎はあんな処からは来ない」
敦「どうして判るんですか!」
太宰「そもそも変なのだよ…」

敦はその答えにえ?と返す
太宰は淡々と言葉を紡ぐ

太宰「経営が傾いたからって
  そんな理由で養護施設が児童を追放するかい?
  大昔の農村じゃないんだ
  いや、第一に経営が傾いたのなら
  一人二人追放したところでどうにもならない
  半分くらい減らして他所の施設に移すのが筋だ」

そう云って太宰は座っていた木箱から飛び降り
敦の前に立つ
Aは其れを黙って見詰めた
此れから起こることにワクワクさせ乍ら
決して表に出ないように平静を装って

敦「何を云っているんです?太宰さん…」
敦はまだ分かっていないようだ
Aも若し敦の立場に立ったら
分からないかもしれないと思った

太宰「君がこの街に来たのが二週間前
  虎が街に現れたのも、二週間前」

答え合わせをするかのように太宰は言葉を続ける
敦はゆっくりと引き寄せられるかのように後ろを向く
其処には青白い月が敦を見下ろしていた
Aはやっと自分の座っていた木箱から降りた

34→←32



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.0/10 (27 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
32人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:月夜のジョバンニ | 作成日時:2021年11月29日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。