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敦「む、無理だ…
奴に人が敵う訳ない!」
敦は国木田の方に勢いよく向きそう云う
国木田「貴様、”人食い虎”を知っているのか?」
敦「あいつは僕を狙ってる!
殺されかけたんだ!
この辺に出たんなら早く逃げないと」
国木田は敦の襟を離し、
其の儘落ちそうになっている敦の右手を掴み床に抑え込む
Aは其の一連の綺麗な動作におお…と声を漏らす
国木田は敦を抑え込んだ儘、口を開く
国木田「小僧!
茶漬け代は腕一本かもしくは凡て話すかだな」
そこでやっと無言だったAが
席を立って敦の方に歩き、しゃがんで声を出す
本当は心の中で叫びまくっていた為
声を出せなかっただけだが
『国木田さん、茶漬け代は私が払うこと、忘れてませんか?
其れと敦さん、正直に話した方が身の為だと思いますが』
太宰「A君の云う通りだよ敦君
其れに国木田君、君がやると情報収集が尋問になる
社長にいつも云われてるじゃないか」
国木田はふんと云い敦の右腕から手を放す
太宰は敦のもとへ歩き、横で止まって其の儘しゃがんだ
太宰「それで…君はあの虎の何を知っている?」
敦「………
うちの孤児院はあの虎にぶっ壊されたんです」
敦は云うか少し迷い、右肩を抑えながら体を起してそう云った
敦「畑を荒らされ、鳥小屋も壊され、それに倉庫も…
死人こそ出なかったけど、
貧乏孤児院がそれで立ち行かなくなって
口減らしに僕は追い出された」
“出て行け穀潰し!”
“何処ぞで野垂れ死んだほうが世間様の為よ!”
敦”何故です、僕は何も…”
“穀潰しはこの施設には要らん”
“いや、天下の何処にもお前の居場所などはありはせん!
何処へでも行き、朽ち果てるがいい…”
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作者名:月夜のジョバンニ | 作成日時:2021年11月29日 19時