【名探偵コナン】…秘密…5【降谷零】

213 ページ33

すると…

スーっと車を道路の端に寄せて停める


『えっ？どうしたんですか？』


どうして急に車を停車させたのか
Aは全くわからなかった


昴は無言のままシートベルトを外し
Aの方へ近づいてくる


『あっ、あの…昴さん⁈』


ガコン…


『きゃ…』


急にシートが倒されて
昴さんの上半身が上に被さる

浴衣が少しはだけて
昴の体が見える


『すっ、昴さん…？』


色気に当てられそうである
Aは慌てて目を閉じた


(……、ん？)


Aが目を開くと
目の前の昴は今にも泣き出しそうな程
悲しい顔をAに向けていた


「ストーカーにあったり
知らない人の車に乗ったり

僕は貴女のことが心配で
可笑しくなりそうだ…」


『…っ、』


(私…昴さんにこんな顔をさせてしまう程
心配かけてたんだ…)


どうしたらいいのか
わからなかった…


昴は俯いたままで
表情がわからない



Aは何も言わずに
そっと昴の頰に両手を当てた


『昴さん…
そんなに心配をかけていたなんて
知りませんでした…

すみません

私、もっと危機感を持って
行動しますから…』



ゆっくりと昴が顔をあげ
寂しそうに笑った



「貴女は本当に僕の心を掴んで
離してくれませんね」


そして、優しくAの頭を撫でる


『昴さん…』


「大丈夫、ちゃんと家まで送りますよ」



マンションまでの道のりは
短い距離ではあったが

2人はお互い何も言わず
ただ前を向いて座っていた





マンションの前で昴に御礼を言って
Aは帰って行く




「はぁ…」

その後ろ姿を見えなくなるまで
ジッと見つめていた


(あれで少しは
視野を広げて行動してくれれば
いいんだが…)


先ほどの行動はAに注意を促すための
演技だったのだ


車を出発させてタバコを咥える


ジンの車に乗ったと聞いたときには
さすがに動揺したが


下手にジンを警戒させると
Aに何があるかわからない


(今のところ
彼女に害はないようだしな…)



それにしても…
車のシートを倒したときのあの表情…

「あれは…やばかったな…」


赤い顔で必死に目を閉じて
男心を擽るには充分すぎる破壊力だった

思い出すだけで笑みがこぼれる


「本当に困ったお嬢様だ…」

214→←212

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す