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肆拾壱 儚くも美しい。 ページ5

「うむ。これでしばらくは大丈夫だ」


「……そうだな」


骨喰藤四郎と共に買い出しに来たが一向に表情が変わらない彼。

もしかして、嫌だったのだろうか?


少しでもなにか楽しんでもらいたいと思って私が無理を言い、連れて来たようなものだ。
嫌がってもおかしくはない。


強引過ぎた。


「…………」


「…………」


沈黙が長い。


一期一振()薬研藤四郎()を連れてくるべきだったか。
失敗したなぁ……。


気まずい状態で帰路を辿っていると、ある店の前で骨喰の歩く速度が一瞬遅くなった。


私は足を止めた。
甘味処の前だった。


「どうし――」


「入るぞ」


無意識だったらしい。
彼の言葉を遮り、手を引いて私たちは甘味処へ足を踏み入れた。


「いらっしゃいませー」


一歩踏み出すと、抹茶の香りが鼻孔をくすぐる。
案内された席で私は彼の前で品書きを並べた。


「?」


「今日は迷惑をかけたからな。好きな物を好きなだけ頼め。拒否権は私が食べたぞ」


そこで理解したらしい。

驚いたような顔の後「……感謝する」と言い、品書きを無表情で見始めた。
無表情だが、どこか嬉し気に。


……良かった。


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かなり悩んでいたようだが、最終的には骨喰は苺のぱんけぇきせっとを、
私は抹茶ぱふぇを注文した。


「もっと食べても良いのだぞ?」


「……夕餉がある」


成る程。
私は知らなかったのだが、ぱんけぇきとやらはかなり量が多いらしい。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


店を出てから、今度はゆっくりとした歩みで帰路を辿る。


「さっき、迷惑をかけた。と言っていたが」


彼は私の歩く速度に気にかけつつ言う。


「何故、あんな事を言ったんだ?」


私の方が固まってしまった。
そのような事を訊かれるとは思っていなかったからだ。


「……この買い出しに、無理矢理連れ出したと思ってな」


「…………」


なにか言いたそうにしているが、言葉がまとまっていないようだ。


沈黙のまま、本丸に着いた。

出迎えた燭台切光忠に荷物を渡し、骨喰に「今日は世話になった」と礼を言い去ろうとしたが


「待て」


と止められる。振り返った瞬間に


「……楽しかった。また良ければ呼んで欲しい」


彼は、薄く笑んだ。


「……無論、そうさせてもらう」


儚くも美しい笑みだった。

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作者名:sary | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年1月4日 20時

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