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前作100000hit御礼 戯論 ページ4

膝丸視点


久方ぶりに見た兄者は、この本丸の主と思われる女人に抱きつきだらーんとしていた。


俺は眼を疑うどころか目玉が飛び出るかと思った。


それに、また俺の名前を忘れている。

……いや、泣いてはない。泣きたいのはやまやまだが、泣いてはないぞ。


主の方も、慣れているらしく普通に俺に接した。


「この本丸を案内しよう。……おーい髭切。離してくれぬか?」


「えー……」


「……仏の顔も三度まで」


シュルシュルとなにかが兄者の身体に巻き付いた。
白い鱗に覆われた美しい尾だった。


「ありゃ」


「!?」


――兄者が締め上げられるかもしれない。


俺は刀を抜こうとしたがそれは無駄な行動だった。


(龍神)の顔は二度までだ」


みるみるうちに主から引き剥がされる兄者。
尾は主の腰付近から延びていた。


持ち上げられた兄者はゆっくりと畳の上に降ろされた。


「龍神を怒らせようとも、良い事はないぞ?」


言葉とは反対に穏やかに笑っている。


――龍神?


「さて膝丸、と言ったか。これから此処を案内する。付いて来てくれ」


神の最高位に属する龍神が、審神者だと?


確かに、並外れた神力を感じたがそんな事が有り得るものなのか?


「……ん?どうした」


不思議そうに訊いてくる主。


「君は……龍神、なのか?」


「うむ。見た目はきゅうとでぷりてぃだが、歴とした龍神だ」


きゅうとでぷりてぃ?


「Aの見た目はきゅうりで、振りたいとは違うんじゃないかなぁ」


きゅうりで振りたい?訳がわからん。


「……すまぬ。戯論(たわごと)を言った私が悪かった。許してくれ」


さっきのは置いておき、だ。

と主が咳払いを一つする。


「こんな見た目ではあるが、私は龍神だ」


彼女が指を天に向けると庭先の池から水柱があがる。
地へ向けると空中で球になった水が低速で下降してきた。


「なんなら、雷でも降らせてみせようか?」


「……いや、良い。実演誠に感謝する」


どうやら本物らしい。


とんでもないところへ俺は来てしまったようだ。


「そう堅苦しくするな。礼には及ばん」


「しかし、龍神に対しそれは――」


「Aが構わないって言ってるんだから、堅苦しいのは無しで行こうよ。膝丸」


はっ、として見ると兄者がどす黒い笑顔で俺にそう言った。


…………。


「……わかった。以後宜しく頼む」


「うむ」


「よろしい」


先行きが、不安でしかない。

肆拾壱 儚くも美しい。→←肆拾 名前って、何だった。



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作者名:sary | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年1月4日 20時

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