雄英脱出【死柄木弔】 (ページ37)

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打ち解けページ37

「ヒミちゃん」

「アヤトくん！！」

先程出て行った2人が帰ってきた。俺はソファーに横になりつつもそいつらを横目で見た。今は午後5時半。

コイツらが出て行ったのが大体4時だから、だいたい1時間ちょっとでチャン付けクン付けの仲に発展したことが伺える。大人にはムリな所業だ。

「イヤ流石に距離縮まんの早すぎだろ。さっきのアレはどうした」

勢いをつけて起き上がり、雄英のガキと無理やり肩を組む。高校生とは思えないくらい凶悪なツラで俺を睨んでから足を思いっきり踏まれた。怒りすぎだろ。

「荼毘くんはオトナの癖に寂しがりなのです。」

　「うわ…キツ。あっち行こヒミちゃん」

「なっ」

死柄木はとっくに自室に戻っていて黒霧も買い出しに行っている。この空間には3人しかいない。この雄英生は死柄木のお気に入りらしいが今なら殺せるか？

「正直オマエのこと信用してない。敵連合にそんな奴がいると俺らは不安で不安でしょうがねぇ」

　「俺もアンタのことは信用してないですぜ」

江戸っ子口調でフザケるな。そう言ってやりたかったが叶わなかった。急にコイツの目つきが変わったから。変に虚で不気味になった、気がする。

イカレ女は気づいていないようだが、微細な変化が俺にはよく伝わって気持ち悪い。

一刻も早く目を逸らしたいのに、何故か目が離せない。そういう系の個性か？全身が凍りついたように動かせず、コイツに何もかも掴まれているようで不愉快だ。

本当に殺した方がいいんじゃないか？

　「俺はヒーローが嫌いだ。」

「雄英生が何言ってんだ。説得力ねぇな」

　「アンタの視界、俺に似てる」

視界？何言ってんだコイツ。イマイチな反応を見せる俺にはお構いなしで、コイツは自分の言いたいことだけを並べていく。

　「誰も俺を見てくれなかった。アンタも？」

「…。」

そういうと、儚く切ない笑みが浮かべられた。あまりにも不安定なすぐに崩れ落ちそうな顔だ。その危うさに、再び釘付けになる。

コイツは俺と似た境遇を持っていたらしい。同情なのか親近感なのか、俺の心の扉が開きかけている。

　「俺たち似たモノ同士、仲良くしようよ」

先程の笑みとは打って変わって、今度はヘラヘラと胡散臭い笑顔。これが小悪魔ってやつなのか？

グラグラと揺らぐこの笑顔で、はじめの不信感はいつのまにか消えていた。むしろ惹かれている自分がいる。

「いいぜ、そうしよう。アヤト。」

これらの心変わりはなんとなく発生したものだ。