雄英脱出【死柄木弔】 (ページ4)

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一目だけページ4

食堂に着いても切島の口が閉じることはなかった。うるせぇ。

切「でよぉ！俺あそこで飛ぼうとしたら常闇が！」

雄英…飯は悪くないな。

切「おい聞いてんのかよ！！てかお前も昨日の訓練やばかったよな！個性チート！教えろよ詳しく！！」

こいつは本当に黙らない。俺は珍しく美味い飯を食えて感動してんだからほっとけよ。あーラーメン美味。

切「はやーく言え！」

しつこいなぁ。めんどくせえ。

　「…俺の個性は」

「キャー！？」

ため息混じりに出た言葉は、悲鳴と食堂中の生徒の足音にかき消された。ウーウーと唸るサイレンが、何故か俺を興奮させた。(変態じゃないよ)生徒に曰く何かが侵入したらしい。

切「何だこれ！？彩人！俺たちでどうにか…」

　「…俺の個性は」

切「今！？それはじっくり後で聞かせてくれ！！」

　「そこらのヒーローより、強い」

切島を置いて俺は外に向かった。

あの人がいる気がする。

人の波を掻き分けて、一刻も早くこの場所を離れて。

生温い人肌が不愉快。切島は遠くで俺を探してんのか呼びかけてんのかわかんないけど焦ってるっぽい。

　「早く行かなきゃ…」

スポッ、という効果音がつく感じで脱出。食堂をなんとか抜け出せば大丈夫。あとは玄関まで走ればいい。

　「ハァ、ハァ、気持ち悪りぃ…」

知らない奴らにもみくちゃにされれば吐きたくもなるだろ。
玄関先には大量の記者が押し寄せてて、しかも担任までいた。幸い誰も俺には気づいてない。

どこかにいる。あの人が…！！じゃなかったらこんな馬鹿げたことしない。

　「！！！」

いた。あの人だ。俺を、俺を見てる。こっちを見てる。優しい笑顔で。混じり気のない目で。

昨日と同じだ。俺が見た中で良くも悪くも一番鋭い目。嬉しい嬉しい嬉しい。俺自身を知っているあの目だ。

しかし遠目でもわかる白い角ばった手がひらりと上がる。何処かに行ってしまう。

　「待っ」

俺の声が聞こえたんだろう。レポーター達はこちらを向いた。あの人とは違う目。なにが違うのか分からない。だけどとても不愉快。

スタスタと先生を囲む輪の中に入る。今度は食堂の時とは真逆で皆んなが道を開ける。

しんとした空間は一瞬の内に終わり、一つのシャッターの音が合図をした。

「オールマイトの授業風景について聞かせ、」

　「オールマイトはスバラシイセンセーです。これからの授業が大変タノシミです」

俺、優等生演じたかも。