雄英脱出【死柄木弔】 (ページ23)

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欲ページ23

「体育祭はいかがですか？死柄木弔」

　「…悪くない」

モニターから目を離さないまま彼は言った。

「悪くない」彼はそう言うが、きっとそれ以上に愉しんでいるのだろう。恐らく理由はヒーロー科、色取彩人。

彼の活躍は目に眩しいほどで、実に…ヒーローらしくない、というか敵そのものの言動だった。死柄木弔が面白くない筈がない。
ガリガリと爪を噛みながらも、その見開いた目で色取少年の勇姿を焼き付けているのだろう。

青白い光を放つモニターに色取彩人の笑顔が映る。とても純真無垢な年相応の笑顔で、私が彼に感じた第一印象とはかけ離れていた。

しかしその笑顔で大勢を崖に突き落とし、平気で人を駒にする。体育祭のルールで許可されてはいることだが普通のヒーロー志望がやることではない。

きっと一般人から見れば、彼は体育祭でひたむきに一位を目指す高校一年生に見えるだろう。

しかし私たちには少なくともそうは見えなかった。

　「アヤト君…」

「気になりますか？」

　「…次の競技だ。」

きっと気になっている。そうでなければモニターのリモコンが塵になっていただろう。

「そろそろ料理番組が見たいんですがね。」

　「ダメ。」

______

控室のドアを開けると、もう切島はいた。紙コップに並々と注がれたお茶を片手に俺に振り向く。

「彩人！次トーナメント」

　「知ってる。ガンバろうな」

次の競技は一対一のガチバトル。範囲外にでなけりゃ何やってもいい。俺は切島とやる。沢山の観客に囲まれることを思ったって、緊張はしてない。

空になった紙コップをぐしゃりと握り切島は渋い顔をして言う。その素振りさえ煩くて鼻で笑う。

「お前つええええからなー、でも勝つぜ！！」

　「顔殴ったら許さねえから」

「ひょええ」

俺は目立ちたい。勝ち負けなんて関係なく。この欲望が良いのか悪いのか全然わからない。だけど、死柄木さんに見てもらいたい。その感情を超えた気持ちが腹の底にいる気がする。

　「せーいっぱい、闘っちゃおうぜ」

「おうよ！！！」

控室で最後の確認。俺は俺。

ホントの俺を見せてやる。