見てるだけでは ページ11
戦う死柄木さんは綺麗だ。だけど悲しいことは沢山ある。死柄木さんの顔にキショイ手が張り付いてたり。死柄木さんが俺をみていないことだったり。
「…視界を奪えば見てもらえる？」
そうだ。俺には個性があるじゃないか。死柄木さんの視界をまた覗こう。個性を、個性を…
死「アヤトくん。見てる？」
「っ！？」
相「色取！！！！！！クソっ」
ボロリ、と露出していた左肩が崩れ落ちる。その激痛に座り込んでしまった。知らない痛みだ。体験したことの無いこの感じ。何故だかこれにマイナスな感情を感じない。親のビンタより痛いのに。ばくごーの肩パンより重いのに。
「あぁ、死柄木さん…」
そうだ。俺が見るのは死柄木さん本人だ。今死柄木さんを一番見てるのはイレイザーヘッド。なら、このヒーローを覗いてみよう。
死「本命は俺じゃない」
頬にも熱が集まる。この高揚は止まらない。
その灰色の髪が。真っ白い肌が。その、真っ赤な瞳が。全部見える。なのに、これを見ていいと言われたのは俺だけなのに。俺だけなのに！！どうして、どうしてヒーローも見てるんだ。嫌だ嫌だ。俺だけの目なのに。どうしてヒーローが見られてるんだ。
「視界を奪わなきゃ…奪わなきゃ…。」
個性を使おうと、拳に力を込める。あれ、なぜだろう。視界がぼやける。そっか。キャパオーバーだ。
「クソ、今かよ。」
悲しくないのに、涙が止まらない。涙というよりただ目から水を溢しているのに近いが、大粒のこれが視界を遮る。俺の個性は使いすぎると涙が出る。涙が出たら、他人の視界どころか自分のだってままならない。
死「泣かないで。すぐ決着つけるからさ。ほら脳無、早く」
コスチュームの要望に書いとけばよかった。涙を何とかしてって。これじゃあ隣にいるはずの死柄木さんが見れない。
相「〜〜っ！！！」
ぐしゃりと音がした。俺の目は頼りにならない。誰の音だろう気持ち悪い。ガンガンと雑音ばかり。
死「脳無ならオールマイトだって目じゃないね。だろ？アヤトくん」
「オールマイト……」
死柄木さんはオールマイトを見ているのか？なら、俺オールマイトも消さなきゃ…
体力の限界だったのか。もう泣き疲れたんだ。
ばたりと音を立てて倒れた。
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作者名：鞘駄律機 | 作成日時：2021年8月26日 14時
