ぶっちゃけ ページ2
「はあー」
今日はさんざんな日だった。俺のクラスの担任の相澤ってのはこれまたイカれてやがった。入学早々個性把握テストォ？俺の個性は“相手の視界色覚を操る”なんだよ。ボールなんか投げられるか。
お陰で順位は17位。最下位の野郎は俺よりも地味地味なソバカスくんだった。あわよくば除籍されたいと思ったのに。それも嘘だった。
「ヒーローなんてなりたくねぇよー」
人気のない河原で石を投げた。ヒーローなんて嫌いだ。押さえて押さえて押さえ付けられて、俺が憧れさせられたのは偽善者のクソ野郎。
自分の個性を初めて使ったとき、覗いたのはどっかのB級ヒーローの視界で、最低だった。その後母親の視界も覗いたけど、俺を見ててはくれなかったみたいだ。
「みんな汚ねぇんだよ」
「だよなー」
「！！？」
まずい聞かれてた。咄嗟に声が聞こえた方から離れる。俺の右隣にいたのは目深くフードを被った二十台くらいの男。雰囲気からして一般市民とは思えない。
「どなたでしょうか。」
俺のよそ行きはこんな感じ。どんなに悪態ついたって小さい頃から刷り込まれてきたこれはなかなか離れない。
「ハハッ、急に豹変するなよ」
ギラついた目ににっこり笑った口は一言で言うと不気味。関わってはいけないタイプだと悟った。背中に嫌な汗が垂れる。
「俺は名乗らないが、まぁイッショに話そうぜ？」
逆らったら不味そうだ。この男の隣に座る。それに、家に帰るより全然マシだと思った。
「…で、さっきのは何ですか。」
「ん？あぁ、別に。ホント、世の中ばっちいよなって。思っただけ」
不気味な見た目とは裏腹に軽快に喋るこの男に先程のような不信感が薄れてきた。何故だかわからない。だけどクラスメイトといるより安心し、母親といるときよりも温かかった。
「君、雄英生？さっきの発言は圧倒的に反社だけど」
この人になら話してもいいのか？名前も知らない赤の他人に、俺をぶちまけていいもんなのか？
「…俺、ヒーローが嫌いなんです」
ギラついたあの目がパッとこっちを向いた。その目は俺の方を捉えて離さない。どこか驚きと喜び？を帯びている。
この不思議な目が気になる。個性を使えばきっと見える。この人の視界を覗いたら、俺の目を見てた。しっかりと。今まで見向きもされなかった俺が。今、人になった。
「そっか。んじゃ、また会おう。いい個性だね」
「え」
最後に見えたのは真っ黒い霧だった。
「褒められた」
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作者名：鞘駄律機 | 作成日時：2021年8月26日 14時
