ヴィランだもの ページ8
俺がそそくさと戻ってくると、死柄木さん達はちょうど「話し合い」が終わったところだった。死柄木さんは怒り心頭に発する様子なのに対して、治崎は満足げだった。俺のゴクドー行きが決定したらしい。
そんな状況でも俺の頭の中はさっきのことでいっぱいだった。あの子を助けられるとか助かるのかとかそういうんじゃなくて、そう考えてしまっている自分に対して戸惑っていた。
俺は死柄木さんのそばにいるからヴィラン側の人間だ。でもさっきの行動は明らかにヒーローっぽい。人に優しくするのってヴィランとして、死柄木さんに着いていく人間として、正しいのかな。
「アヤトくん」
「あっ、はい！」
行きと同じように帰りの廊下でも俺はぼーっとしていたらしい。空は橙色に染まっていた。すでに周りに人はいなくて、「もうすぐ黒霧が迎えにくる」と伝えられる。
死柄木さんは顔からあの手を外しているので、不満そうな表情がよく見えた。
「耳、どうしたの」
「え？」
彼は自分の耳を指差しながら俺の左耳を見た。ピアスが一個ないのに気づいたらしい。正直バレるとは思ってなかったな。そういうのに興味なさそうな人なのに。
「…極道に何かされた？」
「…まあ」
こっちから煽ったなんて言えない。
「やっぱり殺しておけばよかった」
そう言ってお土産に貰った羊羹を死柄木さんは袋ごと粉々にしてしまった。先程治崎の部下が寄越したものだ。彼は鬱陶しそうに手についた塵を払う。
「あー、もったいない」
「アイツから貰ったもんなんてゴミ以下だ」
「高級そうだったのになぁ」
ピアスのことから話を逸らすようにして、へらりと笑って見せた。しかし死柄木さんの表情は相変わらずだ。1人で笑っている自分が馬鹿らしくなってすぐに真顔に戻した。
そんな俺を見て死柄木さんはため息をつく。一瞬呆れられたのかと思ってヒヤリとしたが、彼の手が俺の頭に乗せられたのを感じで安心した。もちろん小指は触れてない。
「クソゴクドーが。なんでアヤトくんを…。」
死柄木さんは俺に優しい。この人は人を殺すけど格ゲーでは正義のヒーローを愛用してるし、たまに花に水をやることもある。黒霧に言われて仕方なくやっているらしいけど。
死柄木さんだってヴィランっぽくないトコがあるんだから、俺もあの子に優しくしても別に良いよな。なんだ。簡単じゃん！好きなようにやろ。
黒い霧が立ち込める。
「迎えにきましたよ」
「死柄木さん、行こ」
「うん」
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ゆずな - この作品めっちゃ好きです！続き待ってます( *´꒳`* ) (4月22日 8時) (
レス) @page47 id: f39121074c (このIDを非表示/違反報告)
Ren(プロフ) - 連合のみんなと仲良いいのめっちゃ好きです！大好きです！！！ (3月24日 1時) (レス) id: 22eb9a9e70 (このIDを非表示/違反報告)
狛 - めちゃくちゃ面白いですね！更新がんばって下さい！ (10月9日 0時) (レス) id: c4f896039b (このIDを非表示/違反報告)
Mika(プロフ) - 小説の中で一番これが好きです。これからも頑張って下さい (2023年4月28日 22時) (レス) id: 0ecb511d32 (このIDを非表示/違反報告)
鞘駄(プロフ) - 魔水さん» ありがとうございます！励みになります (2023年1月10日 22時) (レス) @page2 id: d21a21d4c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鞘駄 | 作成日時：2023年1月9日 1時
