豹変 ページ7
「ヤクザんちってホント殺風景」
延々と続く廊下をしばらく冒険していた。ドアを見つけるたびに、勝手に開けているが今のところ誰にも見つかっていない。
誰もいないのをいいことにフラフラ歩いたり、走ってみたり、なかなか自由に過ごせている。もう15分ほど歩いたか。
変わり映えしない景色に少し飽きてきて、引き換えそうかと思った矢先、またドアを見つけた。他のものよりも頑丈そうなつくりになっている。
これで最後にしよう。
「失礼しまーす」
鍵穴に前の部屋から盗んだ鍵を差し込む。開いた扉の隙間から中の空気が流れてくる。
「ひっ…」
「んー？」
やはり殺風景な床と壁。開けられていないオモチャの箱。奥にある白いベットの上には小さな女の子。全部がチグハグな空間に足を踏み入れる。
怯える少女は精一杯の声で俺に聞く。
「っだれなの…？」
「俺は…んん、難しい質問だなぁ」
わざとらしく腕を組んで見せると彼女は少しだけ警戒をといた。細い腕にたくさん巻かれた包帯。この子はヤクザの身勝手の被害者なのだろう。俺がしてあげられることは何もないだろう。
「それ痛そうだね。俺もそんな感じだったよ。傷みる？」
「あ…ええと」
「はは、ごめんね。もう出ていくから」
くるりと背を向ける。ここに役立つものは無さそうだ。子供部屋に侵入なんてちょっと気まずいし。きっとこの子も困っている。
「失礼しまし」
「まって…！！」
彼女はベットから急いで降りて弱々しく近寄ってくる。拙い足取りが心配に思えて、こちらから手を伸ばす。膝をついて目線を揃えると俺を映す瞳がよく見えた。
「あ、えと、」
涙目を隠すように彼女は俯く。ここで怖い思いをしているのだろうか。どうしても前の自分と重ねてしまう。小さな手は俺の服の袖をギュッと掴んで離さない。
「俺はキミのヒーローにはなれないよ」
「ごめんなさ…」
彼女は手を引っ込める。自由になった手で俺は一つピアスを外す。直径1センチほどのリング型のピアスだ。
行き場を失ったその小さな左手を今度は俺が握る。
「無責任だけど、キミはヒーローに会えると思う」
ピアスは魔除けの意味があるらしい。けど彼女の耳には穴が空いてないからこうやって贈ることにする。俺にしてはだいぶ粋だ。
「左手の小指の指輪はチャンスを呼ぶんだって。キミの今が変わりますように」
細い細い指を優しくリングに通した。
「あ、ありがとう……！」
「ばいばい」
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ゆずな - この作品めっちゃ好きです！続き待ってます( *´꒳`* ) (4月22日 8時) (
レス) @page47 id: f39121074c (このIDを非表示/違反報告)
Ren(プロフ) - 連合のみんなと仲良いいのめっちゃ好きです！大好きです！！！ (3月24日 1時) (レス) id: 22eb9a9e70 (このIDを非表示/違反報告)
狛 - めちゃくちゃ面白いですね！更新がんばって下さい！ (10月9日 0時) (レス) id: c4f896039b (このIDを非表示/違反報告)
Mika(プロフ) - 小説の中で一番これが好きです。これからも頑張って下さい (2023年4月28日 22時) (レス) id: 0ecb511d32 (このIDを非表示/違反報告)
鞘駄(プロフ) - 魔水さん» ありがとうございます！励みになります (2023年1月10日 22時) (レス) @page2 id: d21a21d4c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鞘駄 | 作成日時：2023年1月9日 1時
