そんな個性です。 ページ29
「ねェ、人の視界を見るってどんな感じ？」
ホークスは俺に投げかけた。人がどんな風に世界を見ているかなんて普通分からないからね。でもそんなに良いモノじゃない。
「…最低な感じ」
「えーなんで？」
「なんでだろうね。」
遠くの景色を見ながら、昔のことを思い出した。
______
個性が発現する一週間前。
急に涙が止まらなくなって、病院に行った。
父と同じ“個性”を得たと告げられた俺を、母親は初めて抱きしめた。涙でずっと目が見えなくて不自由な生活だったけれども、母親の気持ちが俺に向けられたのかと思い喜んだ。
涙がようやく止まり、自分の顔を鏡で見てみる。
白っぽかった灰色の瞳が黒っぽくなっていた。母親は父に似てきたこの目を見て、初めて微笑んだ。泣けば泣くほど、色は濃くなった。
笑いかけてくれるのが嬉しくって、家に出たネズミや虫なんかの視界を奪っては涙を出す。
たくさん涙を流すうちに、瞳は真っ黒になって、戻らなくなった。母親はとても喜んだ。
父はヒーロー。と毎日のように聞かされてた。
母親は父が好きらしい。この話をするときは決まって壁を見つめていて、優しい目をしていた。
そんな父に一度だけ会ったことがある。
俺から母親を取り上げる父に良いイメージはなかったが、母親から父の良いところだけを聞かされていた俺はさほどソレを気にしていなかった。
彼がうちにやって来たのは慰謝料やら何やらの話をするためらしい。俺には見向きもせず、母親に怒鳴り声を浴びせながら始終モノに当たっていた。母親は泣きながらその足に縋っている。
何をそんなに怒っているのか、ヒーローなのに何故母親を泣かせるのか、何故誰も俺を見ていないのか。どうすれば俺を見てくれるのか。
気になって母親に好かれているらしい父を見た。
この日が初めて視界を覗く個性を使った記念日になる。
怒りで歪んだ視界と歪んだ顔で泣き喚く母親。これがヒーローで、俺より母親に愛される人間の視界なのかと。俺はこんなモノよりも下の存在だったのだと叩きつけられる。
最低だった。
父が帰った後、泣きながら俺を抱きしめる母親の視界を覗いたが、結局俺を見ていなかった。薄々勘付いてはいた。目を逸らしていた。
俺は愛されてない。そんな現実が見える個性です。
______
「最低でしょ？」
「…。」
「黙っちゃった。でもね、居たんだよ。」
「…なにが？」
「俺を見てくれる人！」
ホークスは黙ったままだった。
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ゆずな - この作品めっちゃ好きです！続き待ってます( *´꒳`* ) (4月22日 8時) (
レス) @page47 id: f39121074c (このIDを非表示/違反報告)
Ren(プロフ) - 連合のみんなと仲良いいのめっちゃ好きです！大好きです！！！ (3月24日 1時) (レス) id: 22eb9a9e70 (このIDを非表示/違反報告)
狛 - めちゃくちゃ面白いですね！更新がんばって下さい！ (10月9日 0時) (レス) id: c4f896039b (このIDを非表示/違反報告)
Mika(プロフ) - 小説の中で一番これが好きです。これからも頑張って下さい (2023年4月28日 22時) (レス) id: 0ecb511d32 (このIDを非表示/違反報告)
鞘駄(プロフ) - 魔水さん» ありがとうございます！励みになります (2023年1月10日 22時) (レス) @page2 id: d21a21d4c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鞘駄 | 作成日時：2023年1月9日 1時
