第四十六話「過去」 ページ4
．
幼い頃の記憶。
消してしまいたい記憶。
時間を戻せるのなら、戻したい。
もう私を、1人にしないで。
＊＊＊
私には、暖かい両親が居た。
困っている人や助けを求めている人を見ると
すかさず手を差し伸べてあげる。
そんな両親。
私が『お母さん』『お父さん』と呼ぶと
ニコッと笑顔になってくれる。
「A」と優しく呼んでくれる声。
暖かくて優しくて心地よくて。
笑顔の絶えない空間で。
あの頃の私は、きっと誰よりも幸せだった。
でも終わりは、突然、来る。
パトカーのサイレン音が街に響いていた。
そこには黄色いテープが貼られていて。
誰かが血を流していた。
大量の血を。
だ…れ。
真っ赤な血を流していたのは、私の両親だった。
"腕"を無惨に切り落とされていた。
出血死だろうと、誰かが言っていた。
誰に殺されたのか。犯人は捕まっていない。
この世界は残酷で、この世界は冷たいんだ。
そんな事、知っていたはずなのに。
私は、両親が与えてくれていた暖かさで
いつからか、そんな事すら忘れていたんだ。
もう戻ってこない。暖かさ。
失いたくなかった暖かさ。
もう一度。もう一度でいいから。
その暖かさのそばに居させてほしい。
もう死なせないから。
だからお願い。
私を。
私を。
私を。
一人にしないで。
＊＊＊
嫌な記憶が私の頭をよぎる。
ずっと、蓋をしていたはずなのに。
「…どうしたんだ？」
と、下を向いて頭を押さえる私の様子に
異変を感じたのか、男がそう言った。
私は、そっと男を見上げて、
『1人は…寂しくて。1人は…怖いですよね。』
と、声を震わせながらも、微笑んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 370人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「HUNTER×HUNTER」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
じゅな(プロフ) - ずっと待ってます！ゆっくりでもいいので更新してくださると嬉しいです！ (4月18日 17時) (
レス) id: 63d6ee7837 (このIDを非表示/違反報告)
あ3 - 更新楽しみにしてます､､､､めちゃ好きです (2022年11月1日 16時) (レス) id: b2be5c4b6e (このIDを非表示/違反報告)
キエラ(プロフ) - 久しぶりに見に来たら更新されてて泣きました(´；ω；｀)これからも更新楽しみにしてます...！ (2021年12月16日 20時) (レス) @page44 id: cdb417a741 (このIDを非表示/違反報告)
mikan(プロフ) - ナルアさん» ナルアさん…！本当にお久しぶりです！ずっと待たせてしまって本当にごめんなさい ; ; いつもコメントしてくださって本当に支えられています…！そう言っていただけて本当に嬉しいです！ずっと待ってくださっていて本当にありがとうございます！これから頑張ります！ (2021年10月19日 22時) (レス) id: 9f58bcb1e6 (このIDを非表示/違反報告)
mikan(プロフ) - 名無し76544号さん» 優しいお言葉に本当に心が暖かくなって小説も書こうって思わせていただけます！本当にありがとうございます！少しでも幸せが訪れますようにっ！最近寒くなってきましたので、お体に気をつけてくださいね！更新頑張っていきますね！ (2021年10月19日 22時) (レス) id: 9f58bcb1e6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：mikan | 作成日時：2020年10月4日 13時
