フェイタン【短編集】 (ページ5)

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【誕生日】フェイ視点ページ5

．

生まれてきてくれてありがとう。

＿＿＿は？なぜ、ありがとう思うか？

ワタシは自分の生年月日を知らない。

まず自分を産んだ親も知らない。

でも、それが何か……？

それを可哀想って思う奴が、一番可哀想ね。

＊

＿＿パンッ。

『フェイターン！誕生日おめでとう！』

クラッカーの音と共に紙がパラパラと舞った。
ワタシはその言葉に、一瞬思考が止まる。

誕生日………？
ワタシには誕生日なんてないね。

『フェイタンって甘いもの好きだっけ？誕生日ケーキ買ってきたよ！』

ワタシに考えるヒマもあたえず、目の前の女__Aは箱からケーキを取り出す。

そのケーキはとても大きくて、真ん中に

【フェイタンお誕生日おめでとう】

と、書いてあった。

…………は？なんねこれ。

「おい、お前。何のつもりか？」

ワタシは、目の前でニコニコと笑っているAを睨んだ。

『へ？何って、フェイタンの誕生日を祝ってるんじゃん！』

「ワタシ誕生日ちがうよ」

『え？！』

驚いたように声を上げるA。

なぜ、今日がワタシの誕生日だと思ったのか。
ワタシは近くのカレンダーを見た。

十二月十七日_____。

あー。そういえば、シャルナークがこのあいだ適当なことを言っていたな。

十二月十七日はワタシの誕生日だとか。

全く。なんの確証もないくせに。

はぁ。目の前で驚いているこいつは、シャルナークから聞いたのだろうか。

『えぇ？！今日フェイタンの誕生日だって、シャルナークが言ってたんだけど！』

…………やぱりか！！

「ワタシは自分の生まれた日を知らないね」

溜息まじりにそう言う。

すると、突然、Aの表情が曇った。
なぜか泣きそうな顔をしている。

……なぜ、そんな顔をするか？

お前も、ワタシを可哀想と思うのか。

同情してくるのか。

＿＿＿＿ギュ。

突然、ワタシの体が抱きしめられた。

「は…？お前なんのつも…」

『フェイタン！！！』

ワタシの体を強く抱きしめるAは、ワタシの声をかき消して声を上げる。

一体、なんのつもりなのか………。

『生まれてきてくれてありがとう』

耳の近くで聞こえるAの声。

その声を聞いたあと、なぜか一瞬、視界がぼやけた気がした。

…………ああ。そうか。

ワタシは、ずっと。

誰かにこうやって、言ってもらいたかったんだ。

生まれてきてくれてありがとう＿＿＿て。

ワタシの頬に、暖かい何かが流れた。