支配してほしいから[夢野久作] ページ3
「おねーえさん!」
どん、と背中に軽い衝撃。
腰辺りを見ると、私に抱き着く久作くんが居た。
「久しぶりだねぇ久作くん!今日はどうしたのかな?」
えへへ、と私を見上げて久作くんは笑った。
目線を合わせる為に屈んで、久作くんの頭を撫でる。
「お姉さんに会いたくなったの!あ、そうだ、これあげるね!」
はい、と何かを手渡される。
「これは…ブレスレット?」
「そうだよ!僕が作ったの!」
これは驚いた、まさか手作りだったとは。
「嬉しいなぁ、ありがとう!前会った時もネイルくれたし、その前も…
こんなに沢山貰っちゃって良いの?」
「うん!前にあげた真っ赤なネイルは、Aお姉さんに似合うかなと思って」
なんて優しい子なんだろう。
少し照れ臭そうにしている久作くんをぎゅっと抱きしめてから、手元のブレスレットを眺める。
「これ、一本一本の糸が凄く細いねぇ…。こんな糸あるんだ…。編むの、難しかったでしょう」
にぱ、と満面の笑みを浮かべる久作くん。可愛い。
「Aお姉さんの為に頑張ったんだよ!」
もう一度、ありがとう、と云う。
「そういえば、このブレスレット、久作くんの髪の色とお揃いだ。白と黒になってるね」
其の途端、ふっ、と久作くんの顔に翳が差した、気がした。
「久作くん…?」
「うん?あぁ、それね、いつでも僕を思い出して欲しくて、髪の毛の色と同じにしたの!」
無邪気にそう云って笑っている。
さっきのは私の気の所為だったみたいだ。
それにしてもなんて健気で可愛らしい子供なんだろう。
久作くんは普段地下牢に居て、中々会えないから忘れられるかもと不安だったのかもしれない。
「大丈夫、久作くんを忘れたりなんて絶対しないよ」
ぎゅ、その小さな体を抱きしめる。
あぁ、出来ることなら地下牢から永遠に開放してあげたい。
「＿うん、ありがとう」
＿その時Ｑが昏く笑ったのは、
窓の外に煌々と光る夜空の満月のみぞ知る。
＿＿ねぇ、Aお姉さん。
＿＿僕、閉じ込められるのは嫌いだけど、
＿＿お姉さんになら、支配されたいんだ
＿＿僕の髪の毛も血液も、僕の全部全部をAお姉さんが持っていてね
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作者名：瀬麦 | 作成日時：2022年1月9日 3時
