16話 ページ17
ギリギリ市場に到着し、急いで買い出しに走り回る。
せめて卵だけでも……いや、肉も欲しい。
必要な物から最優先で買いつつパンにトマトに野菜と追加していく。
6時ピッタリに終わるわけではないが早めに店じまいをできるならしたいしな。
「おや、見かけない顔だね。観光客かい?」
そう声をかけてきたのはサンドイッチを売る店主。
あぁ、すでに作ってある物でも良かったかもしれないな。と今更ながら思いつく。
『そうです。朝市もあると聞いて来てみました。』
「あら、嬉しいわ。ここのサンドイッチ美味しいと評判なの。
良かったら一ついかがかしら?」
『おや、私も今欲しいなと思っていたところでした。
一つ……いや、2つ頂いても?』
明るい店主は商売も上手いらしい。
悪い気もしないし、このサンドイッチは昼にでも食べていいか。
そう思いお金を渡しサンドイッチを受け取る。
「ありがとうね!
……今は国内を観光するには危なくて空気も良くない。
また落ち着いた時にでも来て欲しいわ。」
『お気遣いありがとうございます。
ここは美しい国だ。今回の楽しみをまた次回に持ち越す事も出来る。ゆっくり楽しみます。』
そう言って軽く手を振って市場を後にした。
思っていた以上に両手に荷物を抱えているが、あの男2人なら余裕だろう。
そう思っていると左手に持っていた荷物の重みが消えた。
まさか袋に穴が空いて落としたかと思い左側を向く。
荷物はあった。しかし1人の男がその荷物を持っている。
『……お前。』
「すまぬ。声を掛けてから持つべきであった。」
この場に似つかわしくない、和服を着て人通りの少ない一本道で視線を浴びる男。
石川五ェ門だ。
そういえば今日か明日に来るとは言われてたなぁ、と片隅にしまった記憶を思い出す。
ご飯の用意は3人分か。いけるいける。
「右手にある荷物も持とう。」
そう言って流れるように荷物を受け取るこの男は気遣いの天才だ。
2人にも見習って欲しい。
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作者名:K介 x他1人 | 作成日時:2016年10月16日 16時