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二十分程歩くと、蝶屋敷が見えてくる。

「春馬様!?お久しぶりです!」

蝶屋敷の使用人である、神崎アオイが話しかけてくる。

「ちっすアオイちゃん。大きくなったね」

そう言って頭をよしよしと撫でると、何故かアオイちゃんは顔を赤らめる。

「///……で、今日はどんなご用事で?」

「しのぶにカナエさんの事を頼まれたんだよ。はいこれ、リンゴ」

そしてリンゴを手渡すと、アオイちゃんは驚いた声を出す。

「わ、こんなに……良いんですか?」

「はは、ちょっと買いすぎちゃって……腐るのも勿体ないから、お見舞い品という名目で食べてもらおうかなってね」

そう、リンゴが好きすぎる余り、長野と青森から計一万個程取り寄せた。
だが、これほど取り寄せたのは明らかに計算外であり、一人で食べきれる量でも無い。
だから、比較的人が多い蝶屋敷と、お館様に送ろうと思ったのだ。

「ありがとうございます。では案内しますね」

そして俺はアオイちゃんに案内され、カナエさんの部屋に着いた。
襖を開け、中へ入る。

「え!春馬君!?」

入ったと同時に、そんなカナエさんの声が聞こえる。

「お久しぶりです、カナエさん」

「本当に久しぶりね〜!しのぶはどう?柱としてちゃんと出来てる?」

真っ先に妹であるしのぶの事を心配する。やはり妹思いの良いお姉さんだ。

「ええ、しのぶは頑張っていますよ。やっと慣れてきた感じですかね?」

「まあっ!本人の口からは滅多に聞けないからね〜。良い報告が聞けて嬉しいわ!」

しのぶは、姉であるカナエさんと自分を比べているのだろう。
カナエさんは、天才で何でもこなす人だ。当然、使用呼吸の『花の呼吸』も完璧に操れる。
だが、そんな天才は何人も居ない。

しのぶは姉とは違って、力や才能に恵まれなかった。柱にまで上り詰めたのは、努力を怠らなかったからだろう。

だから、しのぶが落ち込む必要は無いと、俺は思う。

「カナエさん、散歩でもしません?」

「うん!良いよ〜!」

カナエさんと共に庭に出る。蝶が美しく舞っている。

そして蝶に囲まれながら、木刀で素振りをしている少女が一人。

少女はこちらを見るや、駆け寄ってくる。

「久しぶり、義兄(にい)さん」

「ああ久しぶり、カナヲ」

彼女の名は、栗花落カナヲ。

5年前、人身売買に出されていた所をカナエさんとしのぶが買い取ったとの事。

俺とカナエさんは当時から柱だった為、俺は蝶屋敷にかなり入り浸っていた。

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作者名:藤崎風花 | 作成日時:2020年12月29日 0時

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