ただいま (ページ10)

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匠海side

「ハァハァ」

家を飛び出して走ると

暗闇の中ににキャリーバッグをガラガラと転がしながら歩く彼女が目に入る

「待って！」

俺の声が届いてないのか無視してるのか

わからないけどそのまま歩き続ける彼女

そんな彼女に気になっていたことをぶつける

「君さ、転校生の茅野Aさんだよね？」

名前を言うと彼女の足がピタリと止まる

「俺同じクラスの北村匠海」

一応隣の席なんだけどと小さめの声で言うと

茅野さんはくるっと振り向いて

「バレちゃった？」

とまた笑う

確か学校でもよく笑う人だった

まだ転校してきて1週間なのに

彼女の周りには自然と人が集まるようになっていた

「なんでさっき言わなかったの？」

キャリーバッグをその場に置いて俺に近づく

近くで見ると暗闇でも美人だとわかる

「嘘ついてる理由あるのかなって」

「理由かあ、」

そう言って上を向く彼女

「めんどくさいからかな」

そう笑って答えた