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北斗の家は、久しぶりかもしれない。最近は北斗が俺の家に来ることが多かったから。
｢あ！ 俺が開ける！｣
家の鍵を開けようとした北斗を慌てて制して、ブラックストーンのキーホルダーがついた鍵を取り出した。
｢お返し申す｣
｢いや戸締まりじゃないのよ｣
｢開けちゃってるもんな｣
ツッコミを入れながら、開いたドアを押さえていてくれる北斗は、とっても紳士的。
｢ただいま｣
｢おかえり｣
北斗がそう返してくれて、なんだか嬉しくなった。
｢……あ、｣
｢ん？ どした？｣
手を洗って一息ついていると、北斗が真っ青な顔をしていた。
｢樹への誕プレ、樹の家に忘れてきた｣
何を言うのかと思ったら。
……まぁ、北斗にとっては重大な問題かもしれないけど。
｢んなの俺が気にしねぇから大丈夫｣
｢いや俺が気にする｣
｢じゃあ戻んの？｣
立ち上がった北斗を見上げた。
…上目遣いになってる？ 大丈夫？
｢…戻らなくても、いいや｣
｢ん。後日でいいからさ。今日は俺となるべく一緒にいてよ。あと数時間、一緒にいて｣
ただ、隣にいてくれるだけで、それだけでいいから。
｢数時間って言わずにさ。何時間でも一緒にいるよ｣
｢ん｣
その圧倒的な包容力は、言葉にも、北斗の身体にもある。
ぎゅっと包まれるのが、こんなにも安心するなんて。
｢なぁ、同棲ってした方いいの？｣
その安心感と、先程の出来事から、三日後に言おうと思っていたことが口に出た。
｢んー、樹は、どうしたい？｣
｢俺は…、ふたつ家があってもいいかなって。ほら、もし喧嘩しても、逃げ道あるし…、あ、これが本当の理由じゃなくてさ、今日みたいに、ふたつの家で過ごすのが、幸せだから｣
管理費とか、かかっちゃうけど。
｢じゃあ、このままにしよ。俺も全く同じこと考えてたから｣
またぎゅっと抱きしめられて、自然と口角が上がった。
｢…ね、北斗｣
｢うん？｣
｢あと二時間と少しでさ、歳重ねる｣
直接口には出せないが、それを悟ってくれた北斗は、嬉しそうに笑った。
｢だから、その…｣
｢樹｣
名前を呼ばれると同時に、北斗の綺麗な顔がドアップに映って、唇に柔らかい感触があった。
【Happy birthday】2023.06.15
【Fin】
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作者名：更紗 | 作成日時：2023年2月2日 12時
