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《今どこにいる？》
茹で終えてから、一息つくと光るスマートフォン。
愛しい名前と共に表示されたその文面に、口角が上がるのは抑えられない。
《俺の家だけど大丈夫？》
樹のバイト終わりだし、多分樹の家よりも俺の家の方が近い。
《全然いい。むしろありがと。すぐ行く》
淡白なメッセージ。だけどとても嬉しい。
ちょうどいい時間に料理を出せる。良かった。
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鍵穴が回る音がして、次に玄関のドアが開く。
｢失礼しますー、ただいまー｣
鳴らないインターホン、その代わりに回される鍵穴、樹の曖昧な挨拶。
その要素の何もかもが、俺をこの上ない幸福へと導く。
｢おかえり！｣
樹は失礼しますとか言ってたけど、『いらっしゃい』なんて返してやらない。
樹にくれてやる言葉は、これだけ。
｢うぉ、｣
その言葉と共に樹の胸に飛び込めば、細さを感じながらも、受け止めてくれる様子に安心感を覚える。
｢…、樹、おかえり！｣
｢…ったく、ほんとかわいいなぁ。ただいま、北斗｣
うん、その言葉で大丈夫。それが聞けたからもうおかえりはいいかな。
｢夜ご飯できてるよ｣
｢お、まじ？｣
｢うん。出来立てホヤホヤ｣
｢ん、サンキューな｣
頭に置かれた手に、ポンポンと軽く撫でられた。
樹の肩に頭を預けながら言った意図は、多分気取られてない。
樹よりも身長の高い俺が撫でられるために、なんて意図。
だって樹は、こういうことには極めて鈍感。
女慣れしてるくせして、こういうテクニックには気付かない。…あぁ、気付いていて流されているなら、それはそれでいい。
それが俺以外なんて許さないけどね。
｢ロールキャベツじゃん！ めっちゃ嬉しい！｣
｢この間食べたいって言ってたもんね｣
猛特訓したんだから、味に問題はないと思う。樹が食べたいと言うなら、俺には作る以外の選択肢が存在しない。
｢はいどうぞ｣
｢ありがと！ もう食っていい？ いい？｣
｢もうちょっと落ち着いてよ。いいから。ね？｣
でもさ、作ることで笑顔が返ってくるのって、とっても幸せだよね。
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作者名：更紗 | 作成日時：2023年2月2日 12時
