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慌ててスマホの画面を確認しながら鞄を持って席を立つ。
なんで今日に限ってHR長引くんだよ。北斗が先帰ってたらどうすんの、センセーが責任取ってくれんのかって…、
あぁ、そもそも一緒に登下校やめようって言ったの俺じゃん。バカ。
長引いてイライラしてるうちに隣のクラスからぞろぞろと人が出ていくのが見えて、もういないんじゃないかという焦燥感に駆られていたが、それはまだ続いている。
｢北斗！！｣
バン、という音が響くほどドアを勢いよくスライドさせて、幼馴染の名を呼んだ。…いや、ほぼ叫んだという表現の方が正しい。
その音と声に身体を震わせたのは教室内にいた三人だった。
｢ぇ、…樹｣
｢……北斗｣
別に、しばらく話していないとか、喧嘩したとか、そういうわけではないのに。
いつものようにいかない。気持ちを自覚したからだろうか。
朝ぶりに見た北斗は、『授業疲れ』じゃ足りないくらいに疲れきっていて、日光が照らす頬には、涙の跡らしきものがあった。
｢…ごめん、北斗。一緒に帰りたい｣
長いHR中に、北斗になんて言おうと考えていたうちの一つだったのに、それはただの率直な気持ちに終わった。
｢ほら、大丈夫。嫌ってなんかないじゃん｣
｢…お迎えが来たよ、北斗｣
椅子に座っていた北斗を宥めるようにそばに居たのは高地で、少し離れた位置で見守っていたのはきょも。
｢……｣
北斗は何も言わず、視線を下に向けて鞄を持った。
｢ちゃんと話し合ってね。あと頑張って｣
北斗が俺の元に来ると同時に、きょもの声が聞こえた。
二言目は、俺に対する応援だと思う。
あっちからじゃ判断できないほど小さく頷いて、歩き出した。
控えめについてくる北斗は、背は高いが小動物のようで可愛い……、って、なんてときにそんなこと思ってんだ俺。
と自分を叱ると同時に、こうやって北斗を可愛いと思うのはこれまでに何回も、何十回もあったな、なんて思う。
自分でも、あの変な噂がなければ気付かなかった、気付けなかった感情なのかもしれない。
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作者名：更紗 | 作成日時：2023年2月2日 12時
