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｢ねぇ樹〜、なんか今日元気なくない？｣
｢樹が静かだと寂しい｣
｢ありがと｣
その言葉は嬉しい。
けど、朝のことがどうしても頭から離れなくて。頭の中はぐちゃぐちゃして、何事にも集中できず。
｢そういう時は北斗んとこ行ったら？ 樹にとってのお薬みたいじゃん、北斗って｣
｢確かに！ お互い元気なくしてる時に会うと元気になるとことかも付き合ってると思ったうちの一つだもん｣
｢……いや、無理｣
あいつとのことでこうなってるわけだし。もっとぐちゃぐちゃするに決まってる。
｢あれ！ きょもじゃん！｣
その声に、少し顔を上げた。慎太郎の視線の先を辿れば、あまりこの教室では見ない姿。
｢どしたの大我。珍しい｣
｢あぁ、ちょっとね｣
教室の行き来は自由だが、きょも自身がこっちに来ることはない。
そもそも昼休みは俺達三人と、きょも、高地、北斗の三人の同じクラス同士で過ごしているから。
それこそ去年は去年で同じクラスだった同士でいたからきょもとは結構仲良いと思う。今年は違うけど二年連続同じだったし。
｢北斗がメランコリックっぽいんだよね｣
｢めらんこり、？｣
｢簡単に言うと樹と同じ｣
｢元気ないってことか！ ……え、北斗も？｣
｢いや、樹もなの？｣
｢…俺は大丈夫｣
納得していなさそうなジェシーと慎太郎の視線を感じるが、一旦スルー。
｢それより北斗、大丈夫そう？｣
｢いや、大丈夫じゃないよ。授業もずっと集中できてなくて。いつもは答えられてるようなとこでも狼狽えてたし｣
マジでいつもの北斗じゃない。
でも、なんでそうなるんだ？ もしかして、朝高地と会えなかったとか？
｢今は高地が慰めてるっていうか、そばにいるんだけど、俺には何もできないから来た。でも一向に変わんなくて…｣
｢北斗も重症じゃん…、二人してどうしたのさ｣
｢…そういえば、北斗に樹のところ行くように勧めたんだけど、｣
俺の隣の席の椅子を取り出して座ったきょもが、何かを思い出すように顎に手を添えた。
隣の席の奴が驚いてる姿が見えた。
｢北斗、嫌われてるから無理だって。二人、なんかあったでしょ｣
｢え、｣
｢二人同時に元気なくすとか喧嘩以外ないよ！ 樹、何やらかしたのさ｣
あの提案、俺が北斗のこと嫌いだって思わせたってこと？
なんとも言えない焦りと、未だ理解が追いつかない脳内とで、無意識に指に力が入った。
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作者名：更紗 | 作成日時：2023年2月2日 12時
