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｢で、どうなんですか、忘れてないでしょうね｣
｢…忘れてない、忘れてないよ｣
少し強気に攻めていたその姿勢は、一言返せば安心したように弱まった。
｢気持ち、変わってないです｣
まっすぐ交わる視線は、きっとどちらからも変わらない。
｢…俺は、……俺も、好きだよ。北斗のこと｣
俺の気持ちなんてあの時から分かっていただろうに、頬を紅く染めて瞼を伏せるその姿が、とてつもなく愛おしい。
こいつも、俺も、待ってた。
｢…っ、よかった、待っててよかったです｣
｢そんなん俺もだわ｣
再び覗いた北斗の綺麗な瞳を見れば、二年待ったのも軽いな、なんて。
｢返事くれる前から、キス、何回ももらってましたから、なんとなくはわかってたんですけど、。でも、先生、気が多そうだから不安だったんです｣
｢…あー、気が多そうってのは間違いじゃねぇな｣
｢……｣
｢でも、お前だけだよ。ほんと｣
卒業式では見せなかった雫が、一滴、二滴と伏せられた瞼の隙間から溢れ出す。
｢っ、すみません｣
｢いや、いいけど、あんま擦んな。つか泣くな。俺が泣かせたみたいじゃ、…｣
そこまで言って、言葉を止めた。
……俺が泣かせてるよな。まぁ、いい意味で。
｢先生になら、泣かされてもいいです｣
｢っ可愛いヤツめ｣
｢でもメッセージカードは許してません｣
｢……は？ メッセージカード？｣
なんだそれ。全く覚えていなくて、その態度で北斗は悟ったのか、呆れたようにため息を吐かれる。
｢卒業生からの感謝の寄せ書きです。ハートいっぱいもらっちゃって｣
｢…っあー、確かにあったわ｣
別に忘れてたわけではない。それは教師として否定する。
｢でも、うん。愛してるよ、ちゃんと｣
｢…好きです｣
｢あー、でも、デートとかは四月だからな｣
｢え！ なんでですか｣
｢お前にしては珍しく話聞いてなかったか。卒業しても三月いっぱいはここの生徒なの。だから無理｣
眉をひそめて、頬をふくらませている。
わざとか？ 無意識か？ どっちにしろ可愛いなおい。
｢そう言う割にキスはくれるんですね｣
｢……｣
…あー、痛いとこ突かれたな。
｢ふふ、いいですよ。先生のためなら待ちます｣
結局待てなかったのは俺の方で、高校から離れた場所でデートしたのはまた別の話。
【Fin】
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作者名：更紗 | 作成日時：2023年2月2日 12時
