●2-13 ページ14
･
｢もしもし｣
『あ、北斗。なに、どうしたの。なんかあった？ 調子悪いの？ 目？ 耳？ それとも他？』
｢え、ちょ、待って待って｣
通話を開始するなり、樹の声はノンストップで聞こえた。
それを止めると同時に、耳の奥の何かが溶けていくのを感じた。
『待つ、待つよ。待つけどさ』
やっぱり気持ちいい。心地好い。
｢うん、ありがと、樹｣
『…え、何が？ なんかしたか、俺』
電話越しでも、こんなに樹の声に効果があるなんて。さっきのガイディングが嘘みたいに思える。
｢あ、いや、ね？ 樹のガイディング、受けたいんだけど…、今日樹、忙しかったよね？｣
『……巻く』
｢え、｣
『巻くから。今どこにいる？』
まさか許諾してもらえると思わなくて、言葉が詰まった。しかも巻いてまで来てくれるなんて。やっぱり忙しいんだろうに。
｢……病院｣
『…病院？』
｢…うん。病院にいる｣
そう答えると、樹は少し黙ってしまう。何か考え事でもしているのか？
『あー、とりあえず、分かった。大体は把握したから。位置情報送っといて。迎えに行く』
｢え、迎えなんて、悪いよ｣
『俺がしたいだけだから。体調には気を付けろよ』
｢…うん｣
そのまま通話は切れ、もう用も無くなったのに、スマホの画面をずっと見つめてしまう。
｢その方に、来ていただけるんですね｣
｢来てくれる、みたいです｣
｢愛されてますね｣
｢え？！｣
先生のふとした一言で、パッと顔を上げた。
｢普通は、《ボンド》もしていないセンチネルにそこまでしませんよ。《仮パートナー》ならまだしも、おふたりはまだでしょう？｣
｢ボンド？ 仮パートナー、？｣
何だか聞いたことはある気がする。
｢あ、…先日お渡しした資料の中に説明はありますが、一言で言うと結婚や仮面夫婦のようなものですよ。少しニュアンスは異なりますが｣
まだ読み込めてないんだよな。仕事も最近は忙しくさせてもらってるし、空き時間はガイディングや通院に使ってしまっていて、時間が足りない。
近いうちに読まないと。
｢とりあえず、通す許可などを下ろすために、ガイドの方のお名前だけ聞いてもよろしいですか｣
｢樹、です。田中樹｣
｢分かりました。では、私は失礼しますね｣
耳は楽になっていたけれど、少し変な匂いがする。まだ鼻がおかしいのかもしれない。
けれどまた、樹にガイディングしてもらえる。
･
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 845人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
更紗(プロフ) - るなさん» 心躍るようなコメントありがとうございます…！そう言っていただけて光栄です！添削等も含めると一話ずつの更新が多くなってしまうのですが、気長に待っていただけると幸いです…！これからもよろしくお願い致します！ (2023年4月11日 1時) (
レス) id: ede94865a4 (このIDを非表示/違反報告)
るな(プロフ) - お話凄く好きです、一気に数話読みたい気持ちもありますが更新楽しみにしております、頑張ららてください^ ^ (2023年4月10日 22時) (レス) @page42 id: 35fcb02ad2 (このIDを非表示/違反報告)
更紗(プロフ) - RUUさん» 暖かいコメントありがとうございます…！嬉しい言葉ばかりが詰められていて私としては嬉しい限りです！ストックがないと公開する気にならないのでどうしても間隔が空く時があるかと思いますが、どうか見守っていただけると幸いです…！ありがとうございます！ (2023年3月28日 1時) (レス) id: ede94865a4 (このIDを非表示/違反報告)
RUU(プロフ) - すごく好きな作品です…(*'ω'*)毎日更新を楽しみにしています！応援しています！ (2023年3月27日 23時) (レス) @page38 id: 597d6560a7 (このIDを非表示/違反報告)
更紗(プロフ) - 蓮さん» 素敵なコメントありがとうございます…！私もこのおふたりが大好きです…！更新が滞ってしまったり、おふたりの供給による気まぐれ更新があったりするかもしれませんが、是非お待ちしていてください…！ (2023年3月22日 2時) (レス) id: ede94865a4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：更紗 | 作成日時：2022年12月25日 21時
