Ep.61 苦は証 ページ23
You side
『既にトリコ！』
そう歌いきった後、流れてくる音源が止まった。
『はぁっ…はぁ、で、きた…』
今までハードすぎて1回も通せなかった所が、今日はなんと通せたのだ。
まだまだ綻びは沢山あるが、それだけでも私は嬉しかった。
『これで、皆に…1歩…』
近づいた。
そう言おうとしたけど、やめた。
私とお姉さん達の間には千里の道が引かれている。
こんな序盤から近づけた、近付けた、なんて言ってたら後々メンタルが持たなくなりそうだから。
パシンと両頬を叩き、鏡の中の自分を見る。
『なんか…こんなに汗かいて真剣に頑張ってるんだ、私。』
不意に、誰もいない部屋に呟いた。
鏡に映る私は、何かに向かって必死に走っているようで何かを捨てようとしていた。
『えっ、もう19:30？』
もう少しだけ練習、そう思ってひたすら練習していた私は1時間も経っていたことにとても驚いた。
それだけ1点に集中するなんて。
この私がそんなに熱くなっているのか、そう思うと何だか少し口角が上がったような気がした。
だけど、やっぱり入りたてで今までも特にこうと言った運動をしてこなかった私は
今日の8時間程踊り続けた疲労感から、膝から力が抜けてへたりと座り込んだ。
『あぁ…疲れてる。』
私にとって疲労は努力の証だった。
だから普通に元気な日は不安で不安で仕方なくて。
あぁ、私今日も何も出来なかったなって。
でも、今日の自分の体はこんなに悲鳴をあげている。
それだけ、自分に厳しくできた。
それだけでも背中が押される気がしたんだ。
そこで、練習室のドアが思い切り勢いよく開かれた。
柿「Aちゃん！ごめんねこんな遅くなっちゃって…って、大丈夫？気分悪い？」
鏡に向かって焦点が合っていないようにぼーっと座り込んでいた私を見かねて柿原さんが心配してきてくれた。
『ううん、ちょっと疲れちゃっただけ。柿原さんこそ、会議お疲れ様。』
柿「本当に？私は全然大丈夫だけど、…あんまり無理しないでね。」
『無理はしないよ。でも、自分が疲れるのは良い事だから。』
なんの事だか、そんな風な表情をした柿原さんと私は荷物をまとめて車へ乗り込んだ。
柿「私が来るまでずーっと練習してたの？」
『まぁね。ようやく通して出来るようになってさ…。』
柿「んふふ、良かったね、Aちゃん。」
そう言ってミラー越しに柿原さんはまた笑ってくれる。
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パスタ好きのさらさん(プロフ) - *神奈月*さん» なんと！嬉しいお言葉ありがとうございます…！泣 作者本当に亀更新癖がありまして、お待たせして申し訳ないです…。これからもお楽しみ頂けるように頑張りますので、変わらずのご愛読のほど宜しくお願い致します！ (2020年8月18日 12時) (
レス) id: b898e8ff1d (このIDを非表示/違反報告)
*神奈月*(プロフ) - コメント失礼致します！！とても面白いお話でついつい何度も読み返しちゃいました！！更新楽しみにしています！頑張ってください(*^^*) (2020年8月17日 4時) (レス) id: fbe34a81c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：パスタ好きのさらさん | 作成日時：2020年6月3日 8時
