それでも私は。3

Ep.134 私と、もう1人。 ページ48

日向side



ジ「……というわけで、考えてくれないかな？」



今度嵐先輩のバックで踊るための練習をしていた時、突然社長室に呼ばれ、ジャニーさんは私に提案を持ちかけた。



その場には、今の副社長である滝沢くんも座っていた。



…そして、私の運命を変える重大な提案を持ちかけられていた。



日「男性を、装う…ですか。」


ジ「勿論、事務所内だけだ。他のテレビの仕事は女性で出てもらって構わない。」



他のテレビの……仕事？




日「失礼ながら、その話をお聞かせ願います。」


ジ「私は近い将来、女性だけのグループをこの事務所で立ち上げるつもりだ。」


日「！…では私は。」


ジ「勿論、現状そのメンバーになってもらうことでほぼ確定している。」




そして突然のグループ加入の示唆。

嬉しかった気持ちとは裏腹に、私がいないところで急激に何かが揺れ動いていると考えたら震えが止まらなかった。



私一人ではもう止められない歯車に乗っかっているのは、果たして吉と出るのか、凶と出るのか。





日「…それで、他のテレビの仕事とは…。」


ジ「ああ、それについては彼……滝沢から説明しよう。」




そしてジャニーさんは、滝沢くんに目線を向ける。

何かの信号を受け取ったかのように滝沢くんは話し始める。



滝「…日向は、女優の仕事がしたい、そう言っていたね。」


日「はい。……まさか。」


滝「早速だが、出演の仕事が届いた。…要するに、ジャニーズ以外での仕事は女性として、ジャニーズの仕事については男性として振る舞って欲しい。」


日「……なる、ほど。」



本音を言えば全くもってなるほどとはしていなかったのだが、とりあえず外の仕事が来るということは決定事項だそうで。



私は二つ返事でこの提案を受け入れた。


ジャニーズでは、男としての後藤日向。

女優の仕事では、女としてのHinata。




私は、二人になったのだ。




日「所属事務所名はどうするおつもりで…？」


ジ「未公開とすることにする。グループが正式に結成された暁に、情報開示をしようと思う。」


日「そうですか。」




一度、夢のためなら何でも捨ててやる覚悟をした身だ。


もう何を言われても動じない、そういう気持ちの持ちようはついていた。


日(それに…)


入りたての私に、こんなにすぐ女優の仕事が来るなんて誰が想像したであろうか。


ジャニーさんや滝沢君に感謝しつつ、私は社長室の扉を開けると同時に心に消えぬ火を灯した。

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