それでも私は。3

Ep.106 一時間前 ページ20

You side


(え、まだ13:00？一時間あるのか…。私どんだけ早く現地入りしたんだろ。)


岩本兄妹と過ごしたあの後、皆現地入りしてきて一人一人悠長に話してて結構時間潰してたはずなのにな。


まあ思い返してみればさんちゃんが


閖「え！？Aちゃんはっや！！いい心がけやけど気い張りすぎたらあかんでー！」


っていいながら思いっきり私の背中を叩いてきたな。




(…恐らく、柿原さんの心遣いだろうなということくらいは予想がつくな。)


あの過保護ぶりや仕事の出来っぷりからして、今日という日に私のメンタル的な面でも余裕を持たせてくれたんだろう。





『…頭上がらないや、ほんと。』


「あ、あのう……」



ハッとして顔をあげると先程楽屋を訪れてきてくれたメイクアップアーティストさんが心配そうにこちらの顔を覗いていた。




『あっ、す、すみません。考え事してて。』


「緊張しますもんね…。別に大丈夫です！さ、こっちへ座ってください。お披露目の日にはとびっきり美人にしないと！」



自分ひとりのために、これだけの人が動いてくれている。

そう考えれば考えるほど、目頭に熱が帯びてくる。




(あれ、私こんなに涙脆かったっけ…。)



この涙脆さが何を示しているのかは今の私には当然見当はつかないけれども。



ゴシゴシと目を擦るとどこからか軽い悲鳴が聞こえた。


「あっ！！！目擦っちゃダメです！！！さあ早くこちらにいらして！」


やはりメイクアップアーティストってだけあって顔のコンディションには敏感なようだ。

ふふ、と軽い笑みを零しながら指定された席に腰掛ける。



サラッとこの間常賀さんにやってもらった新品の髪の毛を後ろに持っていかれる。


「うっわぁ……めっちゃ綺麗な髪の毛ですね…。」


『ふふ。こないだやってもらったんです。色や髪型は全部マネに任せてしまったけれど…個人的に結構お気に入りです。』


「いやぁマネの方のセンスもそうだけどちゃんと本人にカッチリ似合ってるのがなんというか…神々しいなぁ。」


『いきなりオタクみたいな発言しないでください。笑』


「それはでも言いたくもなりますよ〜…じゃ、今日はスーツ着用なので派手すぎず髪色に合う感じに仕上げていきますね〜。」


『はい、お願いします！』









「それにしても綺麗な肌…。これはいい感じになる未来しか見えないな！」





よしっという声を皮切りにして、私の顔面は彩られ始めた。

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ラッキーカラー

あずきいろ

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