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『失礼……します』
恐る恐る社長室と書かれていた部屋に入り、福沢に促されそのまま椅子に座った。
無言の沈黙は訪れる。
大人しそうな女性が入って来て、どうぞ、と言ってお茶を置いてくれた。
感謝を述べてそれに口をつける。
暖かいそれは乾いていた喉を優しく潤してくれて美味しかった。
ふぅ、と息を吐くと福沢はそれを待っていたかのように言った。
「………いきなりで済まないが、探偵社に入りたいそうだな」
『…………………？』
そんな話した覚えない。
そう思い、首をかしげる。
それを見た福沢はスッと眼を細めた。
「正確に言うとソフィア殿が言ったそうだ」
『ソフィア、が……』
納得したように呟く。
だが、すぐに余計な真似を、と思う。
帰ってきたらお説教だ、そう心にこっそり誓った。
「私は貴殿を探偵社に入れるのは反対ではない。
だが、貴殿は少し不明瞭な点が多すぎる。
それで、少し質問に答えてもらうのを交換条件としたい」
『私、は………入りたく、ない』
「そうか。
だが太宰が言っていた。
貴殿は戸籍もなく住居もなく一銭も持ってない無一文だと。
それなら、探偵社に入った方が何倍もいいはずだ、とな。
どうだ、入るか」
たしかに、Aは無一文だった。
家も戸籍もなくて、こんなんでは生きていくのも大変だろう。
こんなところに条件をチラつかせてくるなんて、きっと太宰は性格が悪い。
それも最悪に。
そう憎々しげに思った。
渋々、これからソフィアに迷惑をかけないようにその条件を呑んだ。
『わかった。
……だけど、私、が答えられる………範囲で、ね………？』
「ああ。
＿＿＿＿早速だが、貴殿の名は天花羽 Aだな？」
『＿＿＿＿』
驚いて息を飲む。
なぜ、今日見知ったばかりの筈の人間にバレたのか。
否定するわけにもいかず、コクリと頷いた。
『何で、知ってる………の』
「天花羽 A。
昔読んだ欧州の童話に出てくる主人公。
嫌われ者の、幼い少女だ。
己の為に、屋敷に住んでいた人間が全員一夜にして惨殺され、少女は姿を消した。
………でっち上げられた話だと言うものもいるが、一方で本当だと言うものもいる」
『……………何で、私って……わかったの』
「その童話には少女は幼いながらに可憐で、天使のようだと。
＿＿＿＿柔らかい銀髪に紫紺の瞳を持つ、天使のような少女だと書いてあったからだ」
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敦君入社前です！
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Cabby - ありがとうございます！是非続編も呼んでください！ (2019年10月4日 19時) (
レス) id: b937c10b42 (このIDを非表示/違反報告)
楳宮 春 - 続編が楽しみです……！ ソフィアちゃんの太宰さん嫌いは凄まじいですね…笑 無理せずに更新頑張って下さい！ (2019年9月29日 20時) (レス) id: 523f0370de (このIDを非表示/違反報告)
アルパカ - とっても面白いです！次の更新も楽しみです！ (2019年9月29日 20時) (レス) id: b5778c1530 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鸞宮子 瑩 | 作成日時：2019年8月26日 13時
